その日は、朝から天気が良くて。
晴天快晴とはまさにこのことだな、と言った感じの雲ひとつない青空だった。
気温は少し蒸し暑かったが、時折吹き抜ける涼しい風が心地良い、とても良い天気の日だった。



―――だから。
まさかこんなことになるなんて思わなかった。



「………嘘……」



ペターニのとある店の中で。
窓越しに外の風景を見たネルは、空から勢いよく落ちてくる無数の雫達を見て呆然とそうつぶやいた。











とても良い天気のその日、フェイト達ご一行は行商都市ペターニに来ていた。
この町に来た主な目的は、物資の調達とアイテムクリエイションでの特許申請。
行商の町というだけあって物資の補給には事欠かないほどの店があるし、工房の設備をすべて揃えたのはエリクールではこの町のみだったからだ。
いつも恒例のくじ引きで役割を分担した結果、神様の悪戯かそれとも青髪王子と青髪女王の仕業なのか(かなりの高確率で後者だろう)また買出し係はアルベルとネルになった。
ここまで来ればいくら鈍感な二人でも仕組まれていることに気付くのだが、別に不都合はないか、ともう諦めてしまっていた。



そしてそして。
二人はフェイトから財布と必要な物のメモを貰って、商売で賑わうペターニの中央広場を歩いていた。





ざわざわ、ざわざわ。
今日の中央広場は、いつになく混んでいた。
いつもの二、三倍はいるのではないかと思うほどの人数が広場に集まっている。
それを見て、人ごみが嫌いなアルベルはあからさまに嫌そうな顔をして、ネルは少し疲れたような顔をしてため息をついた。
「…んだよこれ」
波を作っている人だかりを見て、アルベルがつぶやく。
その声音は不機嫌そのものといった雰囲気で、ネルは苦笑して答える。
「…今日は、一ヶ月に一度の特売の日なんだよ」
そういえば今日だったね、この頃来ないから忘れてたよ。
とつぶやくネルに、アルベルは嫌そうな表情を変えないままに口を開く。
「冗談じゃねぇ…こんな中で買い物しろってのかよ」
「私だって正直、あの人だかりに割って入るのは気が滅入るよ。でも、しょうがないじゃないか。こればっかりは、さ」
ネルは店に集まっている数えきれないほどの人を見ながら言う。
そこにいるのは、少しでも安い物を手に入れようと目の色を変えている主婦(もしくは主夫)達。
…旅をしている自分達だって、少しでも節約して物資の補給をしようとしているのだ。
普通に生活している人達も同じことを思うのは当然だろう。
ネルはもう一度ため息をついて、そして意を決したように言った。
「ほら、行くよ。はぐれないように着いてきなよ」
アルベルの右手首を掴み、そのまま引っ張って人ごみの中に入る。
人ごみに入る直前、アルベルの非難の声が聞こえたが無視した。
ぎゅうぎゅうづめというほどではないが、普通に比べはるかに歩きにくい人ごみの中を行きながら、まずフレッシュセージやらのハーブを買いに花屋へ向かう。
道具屋へ行ってもいいが、そちらはかなり混んでいて長い間並ばなければならないだろうと判断したので、こっちだ。
なんとか店先までたどり着く。たまたますいていて、並ぶ必要もなく買い物ができそうだった。
「いらっしゃいませー。あら?ネル様じゃないですか」
店番をしている少女が、ネルを見て声をかけてくる。
この町では有名人であり英雄でもあるネルを知らない者はいないので、まぁ当たり前の反応だろう。
が。
その少女は、ネルに引きずられるようにしてついてきたアルベルを見て、さらに彼女に掴まれている彼の手を見て、微笑んでこう言った。
「あれ。…ネル様も、とうとう恋人ができたんですねぇ」
「「はぁ!?」」
少女が言った台詞に、二人はまったく同じタイミングで声をあげる。
少女は一瞬きょとんとして、だって…と言いながらアルベルの手を掴んでいるネルの左手を指差した。
繋がれている(というか、ネルが掴んでいる)手を見て、ネルは反射的にアルベルの手を離す。
「はぐれないように引っ張ってただけだよ!」
どこかムキになりながら言うネルに、
「そうだ、こいつが強引に引っ張っていきやがったんだよ!」
賛同しているのか文句を言っているのかそれとも両方なのか、アルベルも続けてそう言った。
そんな二人を微笑ましそうに見ながら、少女はにこにこと笑っている。
「ふふふ、照れなくてもいいんですよ?」
「別にそんなんじゃないって言ってるだろ!」
「…じゃあ、今日のところはそういうことにしておきますね。ところで、何をお求めでしょうか?」
「あ、あぁ。フレッシュセージとブルーベリィ、あとブラックベリィをお願いするよ」
ネルは少女の言い方が少し気になったが、当初の目的を思い出してとりあえず買い物をすることにした。
少女はかしこまりましたー、と言いながらぴょこんと腰をかがめ、下のほうの棚に置いてある薬草を手際よく並べだした。
「…まったく、こんなところで冷やかされるとは思わなかったよ…」
げんなりとつぶやくネルに、アルベルはくく、と笑いながら言う。
「…別に、気にしなきゃいいんだろうが。あながち外れてもいねぇんだし」
「ばっ…何言い出すんだい!」
途端に赤くなって反論するネルを面白げに眺めながら、アルベルはさらに続ける。
「俺は別にバレても構わねぇが?」
半分面白がっている様子のアルベルに、ネルはまた赤くなりながら言い放った。
「…あんたが構わなくても私は嫌なんだよ!」
「…ほぅ」
アルベルは一瞬むっとした表情を作る。が、すぐに元の表情に戻った。
ネルはそれに気付いてぎくりとなる。
彼がこういう表情をした時は、多少なりとも怒っている時だ。
怒らせた、だろうか。
さっきまでの剣幕はどこへ言ったのやら、途端に大人しくなったネルを見ながら、
「…お前にも、照れるとか恥ずかしがるとかの女々しいところが多少なりともあったんだな」
アルベルは言った。
「…悪かったね!」
ネルは眉をつり上げて言い返す。
そんな険悪な雰囲気の二人に、花屋の少女がおそるおそる声をかける。
「あのぉ…品物のほう、揃いましたけど…」
「あ…悪かったね、目の前でくだらない言い争いしたりして」
「いえ、それはいいですけど…」
少女は、自分が余計なこと言ったから口喧嘩になっちゃったのかなぁ、と内心かなり心配していたが、二人が気付くよしもない。
ネルはすまなさそうな顔をして代金を支払い、品物の入った袋を受け取った。
「はいこれ」
そして受け取った袋を、すぐさまアルベルに渡す。
反射的に受け取ってしまったアルベルは、一瞬後にあ?と不機嫌そうな顔をする。
「…普段女々しくなくて、悪かったね」
かなり不機嫌な様子のネルを見て、アルベルはため息をついて首を横に振り、紙袋を右手に持つ。
しょうがねぇから持ってやる、と言いたげなアルベルを見ながら、ネルは行くよ、と言いながら歩き出す。
今度は、アルベルの手を引っ張らずに。





それから、二人とも無言のままにしばらく歩いた。
相変わらず周りは人が大勢いて、歩く速度も自然とゆっくりになる。
「…次は、さっき混雑していて行けなかった道具屋へ行こうか」
とネルが言ってアルベルを振り返った。
が。
「…え」
そこにいたはずのアルベルは、いなかった。
慌てて立ち止まり、もと来た道を少し戻ってみる。
だが、やはりアルベルの姿はどこにも見当たらなかった。



まさか。
…はぐれた?





この人ごみの中を会話もなく歩いていたのだ。
はぐれてしまうのは当たり前といえば、当たり前である。
ネルはあたりをもう一度見回すが、やはりアルベルはいない。



…困ったことになったねぇ…。



ネルはそんなことを思いながら、広場にいる大勢の人々も見やる。
この人数の中から、彼一人を見つけ出すのは困難だろう。
むしろ、少し時間を置いて、すいてきた時に探したほうがいいかもしれない。
この特売市は今のお昼時を過ぎれば、一旦すいてくるのだ。
それはアルベルにも話したし、思ったよりも賢い彼なら自分と同じように考えるだろう。
今、大変に混んでいる広場を探し回るよりも、先に買い物をすませて、すいてきた時に探したほうがいいかもしれない。
ネルはそう思い直し、次の目的地である道具屋へ向かおうとする。
…が、中央広場の真ん中あたりにある道具屋は、まだ人足が途絶えていなかった。
よほど商売が上手なのか、まだ賑わいを見せている。
ネルははぁ、とため息をついて、町の外れにあるもう一つの道具屋へ向かった。
幸い、財布もメモもネルが持っていたので、買い物は十分にできる。





町の外れ、今はそれほど混んではいない道具屋で、ネルは品物を選びながらぼんやりと考え事をしていた。
…さっきは、自分も悪かったかもしれない。
からかわれた時に、反射的に掴んでいた手を振り払ってしまったのは自分だ。
…そりゃあ照れくさかったのも確かだが、少なくとも最初のように手首かどこか、もうこの際あの尻尾でもいいとして掴んでいれば、はぐれることなんてなかったはずだ。
しかも、変な意地を張って一人でどんどん歩いたのも自分だ。
あの人ごみの中を一人で歩いていけばはぐれる、ということなんて、冷静に考えればすぐにわかることだ。
もっとも、ネルがはぐれたのかアルベルがはぐれたのかは、よくわからないが。
それでも、自分も悪かったな。ネルは今になってそう思い始めていた。





そんなことを考えながら必要な物を選び、店主が袋に詰めてくれている時。
ふと、窓の外を見た。
窓越しに見える空、は。さっきまでの晴天が嘘のように曇っていて。
今にも雨が降り出しそうな、灰色の雲が覆っていた。



ネルははっとなった。
この時期、この辺りは。
たまに、にわか雨が降るんだった。





ネルの嫌な予感は見事に的中し。
やがて空から、雨がぽつりぽつりと降ってきた。





これはまずい。
にわか雨とはいえ、短くても十数分、長くて数十分は振り続けることだってあるのだ。
はぐれたアルベルがどこか屋内にいてくれればいいが、そうでなければ。
彼なら、雨が降った時点でどこか店先の軒下とかで雨宿りしているとは思うが。
…意外にも、変なところで律儀で、実は優しい彼のことだ。



もしも、もしも自分を捜してくれていたとしたら。
濡れようが一向に構わずに歩き回っているだろう。
実際、戦闘中に雨が降ってきても気にしずに続け、そしてずぶ濡れになって帰ってきてそのまま風邪をひいたこともあった。
…もし、今もそうやって自分を捜し回っていたとしたら。
それは可能性の一つでしかないが、でもネルは急に心配になった。



ネルは店主に荷物を一旦預かってくれるように頼み、二つ返事で承諾が返ってくると同時に店の外に飛び出した。





最初はぽつぽつと控えめに降っていた雨だったが、少し経つとすぐに本降りへと変わった。
あっという間に道路には水溜りができ、辺りにいた人も慌てて軒下や屋内に入る。
ネルは人通りも少なくなってきた街路を、水溜りの水を跳ね散らしながら広場に向かって走った。
店を飛び出して間もなく、ネルの髪や服はびしょぬれになる。
でも、ネルはアルベルをびしょぬれにさせるほうが、何倍も嫌だった。



…なんで。
なんでさっきはぐれた時に、すぐに捜さなかったのだろう。
そもそも、自分はなんで変な意地を張って先に行ってしまったのだろう。
自分の判断や行動を悔やみながら、ネルはまた水溜りを蹴った。



広場にたどり着き、ネルはずぶ濡れのまま辺りを見回す。
突然降ってきた雨のせいか、さっきまでの人だかりは嘘のように広場は閑散としていた。
アルベルとはぐれた辺りまで戻って、その付近にもいないことを確認して、ネルはますます不安になる。
…どこか屋内にいてくれればいいのだが。
濡れて頬に張り付く髪を指で払って、ネルはまた走り出そうとする。
と。





「―――おい!!」



ばしゃり



後ろから水溜りを踏む音と共に、聞き覚えのある声が聞こえた。





ネルは振り向く。
そこには、紙袋を左手で抱え、白い傘を右手に持ったアルベルが、珍しく焦った表情でネルのいる方へ向かって走ってきていた。
「…あ」
捜していた相手が見つかり、ネルが安堵の声を漏らした。
アルベルはネルの目の前まで来て、びしょぬれのネルをとりあえず自分の傘にいれて雨を阻む。
「その傘、どうしたんだい?」
見覚えのない、白い傘を見ながらネルが問う。
「…んなこと、今はどうでもいいんだよ」
心なしか怒っているような声音のアルベルに、ネルはとりあえず口を開く。
「そうだね。まぁ、あんたが濡れてなくてよかったよ」
軽く微笑みながら言うと、アルベルは険しい顔つきになり、
「…この阿呆が」
低い声でそう言った。
その様子がやっぱり怒っているようだったから、ネルは思わず押し黙る。
「…ごめん。はぐれたの、私のせいだよね」
そう言って謝る。
「そんなくだらねぇことで怒ってんじゃねぇよ。なんでこの雨の中、傘もささずに走り回ってんだ!」
そう怒鳴られ、ネルは一瞬きょとんとなる。
「だ、だって。あんたが雨に…」
「あんたが、じゃねぇだろうが!なんでもっと自分のことを気にしねぇんだよこの阿呆!」
本気に近い剣幕で一喝され、ネルは視線を下げる。
そんなネルを見て、アルベルはふぅ、と息を吐いてそしてまた問う。
「…。あの後、どこに行ってた」
さっきよりも和らいだ口調でアルベルが言う。
「町外れの…道具屋」
ネルは正直に答えた。が。
「…あぁ!?」
どう聞いても怒っているとしか聞こえない声音でそう言われ、ネルは少し面食らう。
気遣わしげに上目遣いでアルベルを見上げるネルに、アルベルはふーっと長く息をついて口を開く。



「…本気でお前は阿呆だな…何でわざわざ雨が降ってくる時に合わせて外に出る必要がある?」





ネルは一瞬驚き、そして、



「…、…心配、してくれたのかい?」



どこか呆然とつぶやいた。
アルベルはぐっと詰まってそっぽを向き、



「…さぁな」



こう、一言だけ答えた。





ネルは自分の頬が、無意識に緩んだのを感じた。





やっぱり彼は。
失礼で、毒舌で…、



そして、優しい。





しとしとと振り続ける雨の中。
ずぶ濡れのネルと、右手に傘、左手に紙袋を抱えたアルベルは、白い傘を差して人のいない道を歩いていた。
「…それにしてもさ、あんた今まで一体どこにいたんだい?」
と訊いて来るネルに、アルベルはそっけなく返す。
「酒場」
「は?昼から飲んでたってのかい」
「あのうざってぇ広場以外ならどこでもよかったんだよ」
人ごみをみて吐きそうな顔をしていたアルベルを思い出し、ネルは少し笑う。
「なるほどね…あんたらしいよ。で、さっきも聞いたけどその傘は?まさかわざわざ買ったなんて言わないよね」
「…さっき買い物した、花屋のガキがよこしてきたんだよ」
ネルは少し目を丸くする。
さらに訊いてみると、案の定というか予想通りというか、雨が降ってもそのまま歩いていたアルベルを見かねて渡してくれた、らしい。
「…そういえば…さっきは、ごめん」
花屋という話題が出てきてさっきの口喧嘩を思い出したネルは、申し訳なさそうに言った。
「あ?」
「私から手、引っ張ってったのにさ。照れくさかったとはいえ、振り払ったりして…ごめん」
「…んな細かいことでいちいち謝るんじゃねぇよ。つか、照れくさかったのか?」
「………」
ネルは少し顔を赤くして押し黙る。
それを肯定ととって、アルベルはくく、と喉で笑う。
「…あんな大勢のいる場所で急に恋人だとか言われたら、真実はどうあれ恥ずかしいに決まってるじゃないか…」
…まぁたしかにあながち外れてはいないし、真実に近いんだけど。
そんなことを思いながら、ぼそりとネルはつぶやく。
雨の降る音で聞き取りにくい声だったが、アルベルにはばっちり聞こえていたりした。
「…同じ傘に入ってる時点でもうアウトだと思うがな…」
「…。…!!」
言われて、ネルは今の状況を再確認して、慌ててアルベルから離れようとした。
それを阻むように、アルベルは素早く傘を左手に持ち替え、空いた右手でネルの手を掴む。
「お前は阿呆か。またさらに濡れる気か?」
「…どうせもうずぶ濡れなんだから変わらないよ」
「それは単なる屁理屈だろうが」
「でもその傘はもともと一人用だろう?二人で入るのは正直狭いし、あんた左肩濡れてるじゃないか」
「このくらいなんでもねぇよ。お前に変に気を遣われて風邪ひかれるほうが迷惑だ」
呆れた瞳でそう言われ、ネルは渋々傘の中に戻る。
が、アルベルはネルの手を掴んだままだ。
「…手…離してくれないかい」
「離したらお前、また逃げるじゃねぇか」
「逃げないから離してよ。…やっぱり街中では照れくさいんだよ、誰が見てるかわからないし」
「誰も見てねぇよ」
アルベルの言ったとおり、降り続いている雨のおかげか、周りには人っ子一人いなかった。
屋根の下で雨宿りしている人も見られない。
ネルはきょろきょろと周りを見回してそれを確認する。
そしてふぅっと息をついて、
「…あぁもうわかったよ…好きにしな」
「そうさせてもらう」
アルベルはそう言って、ネルの手首を掴んでいた手を何気なく移動させて、今度は自分の指と絡めるようにして握りなおす。
驚くネルに、アルベルは、
「握るならこの方が楽だろ」
とさらりと言った。





…私の手は濡れた所為で冷たくなっているのに。
握ったって自分の手が冷えるだけなのに。
義手をつけている左手で、紙袋と傘を持つのは面倒なのに。
右手で傘を持ったほうが、断然楽なのに。



なのに。
この男は。





「…でも、嫌とは思えないんだから、私もそろそろ重症かな…」



ネルは本当に小さな声で、アルベルにも聞き取れないような声で、つぶやいた。





ペターニの町の中。
ずぶ濡れのネルと、紙袋と傘を左手に持ったアルベルが。
軽く、だがしっかりと手を繋いだまま、一つの傘に入って歩いていた。
雨は降り続け、周りに人はいない。



…こんなことがあるなら、雨がもっと好きになれるかもね。
そんな、気がした。





「…んふふふふ―――、やっぱりコイビト同士なんじゃない、ネル様ったら―――」



雨の中。
そんな二人を、ちょっと変な風に笑いながら覗き見していた誰かさんがいたとは知らないで。





次の日。
「これ、ありがとう。助かったよ」
傘を返しに行ったネルは。
「いえいえいえー、歪のアルベルさんとクリムゾンブレイドのネル様が一緒に入ってくれるなんて、この傘も本望ですよぉv」
と言われ。
「…まさか、あんた見て…!」
「ええv 雨の日って誰もいないように見えても、雨の音とかで気配とか隠せるらしいですしー、視界も悪くて隠れやすいですしー、かくれんぼや尾行にはもってこいなんですよー?って、クリムゾンブレイドファンクラブの人が言ってましたー」
だからちょっとだけ、覗き見させてもらっちゃいましたv えへ☆
とか言って微笑む彼女を見ながら。





ネルはちょっとだけ雨が嫌いになった。