空が 綺麗だね
…あんたのいる場所の空も 綺麗かい?





大空。





今日もいい天気だね



…月並みな台詞だな



悪かったね
…でも 本当にそう思ったんだから別にいいじゃないか



なんでまた今更
昨日だって同じような天気だったじゃねぇか



うん
…そうだね



…?








空が 青いね



…??
さらに月並みな台詞だな



まぁ 私たちの星では
当たり前だけどね



…他の星だと 違うのか?



うん…
少し前 マリアが言ってたんだ



何て?



"このエリクールは 青空がとても綺麗ね
この星の空が青くて 良かったわ"って



…空は青いもんじゃねぇのか?



まぁ そうなんだろうけどね
空が青く見えるのって 元をただせば光の加減だろう?



確かにそうだが
まさかあいつらの星は太陽光の屈折率が違って黄色い空だとでも?



ううん
マリア達のいた星では
大気汚染とかで空が毒されて
暗い 黒い空だった時があったんだって



黒い…空か



うん 今はちゃんと青い空らしいけど
それを聞いて黒い空を想像してみたら 少し怖気がたったよ



…確かに黒い空なんて 気色悪いな



…うん
でも 今はとても綺麗なんだって
多くの人の努力で 元の澄んだ色に戻せたって



ほぉ



今頃
綺麗な空の下で
この星に来る前みたいに平和に生活してるのかな? あの子たちは



…だろうな








シランドの空は ここから見る空よりも明るくて薄い色な気がする



…大して変わりはしねぇだろうが



あの街で二十年以上過ごしてきたんだ
微妙な違いだけど やっぱり少し違うよ



ほぉ
…なら カルサアの空はこの空よりずっと暗いな



…そうかい?



アーリグリフに比べりゃ青いがな



でも
晴れた日のアーリグリフの空は シランドに負けないくらい綺麗だったよ
この間親書届けに言った時の空 本当に綺麗だったから



そうか?



そうだよ
…あんたが前言ってただろう アーリグリフは気温が低いから
空が綺麗に見えるって



確かにそんなような事言ったが
…よく憶えてたな お前



あんたが言ったこと忘れるわけないだろう?







なんだい?



…別に…








空って言えばさ
…あの時 一緒に見た夕焼けは とても綺麗だったね



あの時?
あぁ ガキの頃の話か



あれも 空の色のひとつなんだよね
…不思議だね 空って



色が変わることがか?



うん
朝は 夜明けの直後は
青と白の中間みたいな 水色とはちょっと違う色



朝っつーと俺は白い空くらいしか思い浮かばねぇが



あんたは寝ぼすけだからね
その色を知らなくても無理ないか



…悪かったな



別に?
でも朝方の白い空も綺麗だと思うよ



ほぅ…




昼になると 透き通るみたいな綺麗な青



透き通るみたいな?
別に普通じゃねぇか



…あんたは感受性がないねぇ



お前が過大評価しすぎなんじゃねぇか



ま そうかもしれないけどね
で 夕方になると 真っ赤な夕焼け
陽の沈む直前は 紫
夜は紫が濃くなったような 黒



よくもまぁそんなに色が出てくるもんだ



…普通じゃないかい?








母さんが言ってたんだけどさ
太陽は 色の神様なんだって



はぁぁ?



人って 光がないと色を認識できないだろ?
だから その光を与えてくれる太陽は色の神様なんだってさ



…その発想 誰かに似てる気がするな



誰だい?



…言わん



そう
…もし 太陽がなかったら この世界は黒い色しか存在しなかったのかもね



そりゃそうだろうな
光がなければすべて黒だ



ま そもそも太陽がなければ私たちは生まれてすらいなかったんだけどね
…でも もし本当にモノクロで黒と白しか存在しなかったら きっとつまらないんだろうね



何もかもくすんだ味気ねぇ世界か
確かにつまらねぇかもな



あんたの目の色も黒ずんだつまらない色だったのかもね
…それは嫌だな



…ふん








空は広いね



…そうだな



この 空は
フェイトやソフィア マリアやクリフ ミラージュにスフレ
皆のいる星に繋がってるんだよね



宇宙とやらの話か?
確かにそうらしいな いまだによくわからんが



…空は 本当に広いね
とても広くて大きくて 遠い



…何だ?
今日はやけに空について語るじゃねぇか







何か思うところでもあったか








…別に



ん?



空の事なんて 本当はどうでも良かったんだ







ただ
あんたと少しでも長く話がしたかっただけ








…あの 戦いが終わって







…皆とも 離れ離れになって







…あいつらにはあいつらの 自分自身の世界があるから
それはしょうがないし 当たり前のことだからわかってるつもりだけど







…今日の
この青い綺麗な空が
あの戦いが終わった直後の 皆と別れた時の
…あの 空に…そっくりで







…あんたに会ったのだって
すごく 久しぶりで







…あの 大切な仲間達みんなと
次に会える日はいつなんだろうって








…だから感傷的になって 空について色々と話したがったのか












…ったく
お前も女だな



なっ
…なんだいそれ



寂しいならそうやって言え
慰めるくらいしてやる



…う わ
あんたが慰めるとかって似合わなさ過ぎ



放っとけ








それに



…ん?



この空を越えれば
いつでも会えるだろう?あいつらと







まぁ 俺らから会いに行くのは無理として
あいつらの方からならいつでも会いに来れるんだろう
…別れ際にも そう言ってたしな



…うん



自分で今さっき言ったんだろうが
この空はあいつらの星に繋がってるんだって



…うん



だったらんな顔すんな 別に今生の別れってわけじゃねぇ
…あいつらのことだ そのうち急にひょっこり顔出すかもしれねぇしな



……うん









だからんな顔すんなって言ってんだろ
お前が暗いと調子狂う



あはは
…うん そうだね



あと何か話したいならそうやって言え
お前は自分のしたい事を自己完結しすぎだ



クレアにもよく言われるよ













ありがとう



あ?



…ちょっと 気が楽になった



そうか



うん








それに



あ?



あの子たちとの間には 空っていう
…まぁ 正確に言えば宇宙ってやつか
まぁともかく 大きな距離があるけど







あんたは
…あんたとは








同じ
空の下で生きてるから








だから
会おうと思えばいつでも 会えるしね







あんたと同じ星に生まれて良かったよ
同じ 空の下に生まれる事ができて



…そうだな








空が 綺麗だね



そうだな



…あんたの住んでる場所の空も 綺麗かい?



さっき同じような事自分で言わなかったか



いいから
…綺麗かい?




綺麗 だな



そう








私の住んでる場所から見た空も 綺麗だよ








そうか



うん





…ちょっとした事だけど とても 素敵だね それって



あ?



同じ空の下で 同じ空を見ていられるって事だろう?



そうなるな








ねぇ





あ?








空が 綺麗だね





そうだな