っ…てぇ!



動くんじゃないよ!
というか あんた動けないはずだろ



…んな荒々しい手当てされたら否が応でも動いちまうだろうが



荒々しくて悪かったね
…ほら もう少しで終わるからじっとしてな



わーったよ
じっとしててやるからとっとと済ませろ



…なんであんたはいついつでもそんなに偉そうなんだい?



言ってろ



…ったく
はい お終い



ふん
…ご苦労



相変わらず失礼な奴だねあんたは



今更





自信満々。





…ねぇ



あー?



なんで こんな大怪我したんだい



なんでって
戦闘中魔物にやられた そんだけだろうが



…あの時
なんで 私なんか庇ったんだい



………



黙ったってことは図星だね やっぱりあんたは私のこと庇った
今回は偶然なんかじゃない



…自意識過剰じゃねぇか?



はっきりあんたは否定してない
…それはあんたにとって肯定と同じだよ









本当なら 私が怪我してるはずだったんだ
私が …手当て"される"立場だったはずなんだ







何で…
何でこんなことしたのさ







急所をギリギリ外れてたからまだ良かったものの
…もう少し体の位置がズレてたら あんた危なかったんだよ







少し前のあんたなら…
私を庇うより 敵を攻撃してたはずだ
…なのに どうして…





…知らん



…はっ?



知らねぇよ そんな事



知らないってどういう事さ
あんた自身の事だろう



…知らねぇっつってんだろ
気づいたら体が動いてたんだよ



…そんな
そんな事で 自分の身を危険にさらすのかい



そんな事?



そうだよっ
そんな事で危険な目に遭って もし命を落としでもしたらどうするんだい!



…あぁ 十分有り得る事態だな



何 人事みたいに…!



しょうがねぇだろ



何がっ…



俺は俺が死ぬよりお前が死ぬほうが嫌なんだから








―――…っ



お前はいつも"理由"にこだわるよな
…これが庇った理由だと言ったらどうする?
満足か?












…んで…







…何で… そんな命を粗末にするようなこと 言うのさ







まるでっ… 自分の命はどうでもいいみたいじゃないか
そりゃ 私の身を案じてくれたのは嬉しいよ 嬉しいけど…



事実そうなんだから仕方ねぇだろう?







俺は俺の命なんぞぶっちゃけどうだっていい
価値など感じねぇからな







…元々
本来死ぬべき時に死ななかった 死に損ないの命だ








そんなことない
…そんなこと あるはずない



ほぉ?



死に損なった命なんて あるはずない
あっちゃならないんだ








…何だ お前は俺と同じ人種だと思ってたんだがな…



なんだい …それ



自分の命に価値を感じない人間








どうして そんな事思うんだい?



思って悪いか?
今までのお前の言動やら行動やら見てると そうとしか思えないんだが



…私は



国の為だの他人の為だの そんな周りの事ばかり優先しやがって
自分をないがしろにしてるだろ 憶えがないとは言わせねぇぞ








…違う
私は 自分の命を粗末にしてるわけじゃない



ほぉ?



私は私がしたい事をやってるだけだ
ただ それが命を賭してでもやりとげたい事だってだけ
他人の為なんかじゃない
私は …私の為に自分の命を使ってるんだ







自分の命を
…ないがしろになんか してない








そうか お前は自分自身の為に自分の命を使っていると



そうだよ



なら 俺が俺の命を何にどう使おうと俺の勝手だろう?







自分の命を粗末に扱おうが 誰かの為に使おうが 俺の勝手だろう
なら お前の為に使う事が何故悪い?








…馬鹿







馬鹿だよあんた



…そうかもな








でも



ん?



私の為なんかにあんたの命を使ってほしくなんてない



あぁ?



私だって
自分が死ぬよりあんたが死ぬほうが何倍も嫌なんだ…



―――…








俺だって …そうなんだから仕方ねぇだろう












…だったら







…約束しな



なんて





"絶対 死なない"って








自分の為に自分の命を大事にできないんだったら
私の為に自分の命を大事にしな





大事にするって 約束してよ…








… 阿呆



…何が阿呆なのさ



俺はお前の為に死ぬなんて一言も言ってねぇだろ
お前が死なない為に行動してるだけだ



…?





―――俺が
死ぬわけねぇだろう?








な んでそんな 自信満々に言えるのさ?
さっきまで大怪我してぐったりしてた癖に …死にかけてた 癖に



死なねぇよ





…俺が死んだら
勢い余ってお前まで後を追いそうだしな



…はっ?
何それ自意識過剰…



なのか?
お前ならやりかねないと思うが



…っ



言ったろ?
俺はお前を死なせたくないって





俺が死んでお前が死ぬなら








俺は絶対死なない








自信満々だねぇ…



現に自信があるんだから当然だろう



…あんたには負けるよ



は?



何でもない








理由 か…



はぁ?



…私が生きてる事で あんたが死なない理由になるのなら…





私も絶対 死なない








当然だろう
つか俺が死なせねぇよ



ふふ
言ってくれるじゃないか








約束したからには絶対に守ってもらうよ
でなきゃ …さっきの 後を追うって例え話 もしかして実行するかもしれないよ?




それは嫌だな



だろう?
だから約束 守って





絶対
…絶対 死なないで








言われなくとも










…ま お前が死んで一分後には約束なんぞ適用されてねぇだろうがな



え?