「はぁ…ヒーマーだー!!」
「うるさいよフェイト」
「だって暇なんだよ!あぁぁぁ今日は世界を救うためにルシファーのとこ行ってボコ…じゃなかった、倒しにいくはずだったのに!」
「しょうがないじゃない。こんな大雨の中でモーゼルの古代遺跡までなんて、行けないよ」
「キメラと戯れて反射神経を養ったりファイヤーウォールでポリフェドロン蹴り転がしたりあの色の変わる水晶かっぱらって売っぱらってバーニィレース…じゃなくて旅の資金にしようと思ってたのに!」
「…そりゃ確かに、私もペルソナのファンシーフォームで遊んだり螺旋の塔のキラキラしたところで記念撮影したりしたかったけど…しょうがないじゃない、天候ばかりはどうしようもないよ」
「わかってるんだよ、わかってるんだけど、わかってるからこそイライラするんだよなー…」
「せめて、ここがジェミティだったら時間潰せたのにね。サーフェリオは雨の日とても綺麗だけど、お店とか少ないしなぁ…」
「なんかすることないかな…室内でできて、大人数でできて、テンション高くなるような事…」
「フェイト、休日が雨だといつもゲームしてたから、やる事思いつかないんでしょ」
「うっ…お前だって猫と戯れて湿気多くてやんなっちゃうーとか言ってただけじゃないか」
「…むぅ。まぁ否定はしないけど。確かに暇だよね、何かすることないかな」
「あっ!そうだ!」
「えっ?なに?」
「王様ゲームしよう!」





The game of king!





「え?王様ゲームって、クジひいて王様だった人が好きに命令していいってやつ?」
「そう!みんなでやろうよ、面白そうだし」
「いいね!ねぇねぇ、マリアさんもやりましょうよ」
「あら、楽しそうじゃない。そうね、私もやりたいわ」
「ほら、そんなとこでチェスばっかやってないで、アルベルとネルさんも混ざりなよ」
「は?何をやるって?」
「王様ゲームよ。知らない?」
「番号と王様のクジを作って、王様を引いた人が番号を持ってる人に命令していいっていうゲームです」
「ふぅん…楽しそうじゃないか」
「…誰がそんなくだらねぇ事やるか」
「いいじゃないか、ネルさんもやるって言ってるんだし」
「どうせなら大人数のほうが楽しそうだし、クリフあなたもやりなさいよ(命令形)」
「おい、なんで俺が…」
「だって、暇だったんでしょ?…クリフがいないといぢめられ役がいなくなるじゃない…ぼそぼそ」
「なんか今とても俺にとって不愉快な発言をしなかったかお前」
「やぁねぇ気のせいよ、空耳に決まってるじゃない」
「…まぁ、確かに暇だしな」
「ほらほら、スフレちゃんとロジャーもやろっ!絶対楽しいよ」
「うんっ、やるやるやりたーい!」
「よくわかんねぇけど、楽しそうだから参加するじゃんよ!」
「じゃ、トランプのジョーカーが王様で、Aから7までが他の番号だね」
「よく混ぜて、裏返しにして、っと。じゃ、皆さん一枚ずつ引いてくださーい!」
「引いたわね?じゃ、見てもいいわよ」
「王様、だーれだっ!」
「あっ、僕王様ー。まずは楽なのにしよっか、じゃあ、三番が三回回ってワンと鳴く」
「うぇっ、あたしじゃん!」
「スフレ姉ちゃん運ねぇなー」
「うるさいなぁ。…くるくるくるー、ワン!」
「はい、OK。じゃあ第二回戦ー!」
「王様、誰ですかっ?」
「あ、オイラじゃんよ!えーっとじゃあ、おねいさま、オイラを抱っこしてくださいv」
「百年早いんだよクソガキ!」
「ってぇ!何するじゃんよバカチン!」
「あーもーアルベル、嫉妬しちゃってー」
「それに、誰かを特定しない為に番号を決めてあるんだから、ちゃんと番号で指名しなきゃだめだよロジャー?」
「え、そうだったじゃん?じゃぁ…六番の人オイラを抱っこしてください!」
「………」
「…何沈黙してるんだいクリフ」
「…俺だ、六番」
「うぅえぇぇぇえ!なんでデカブツなんかに…!」
「俺だってお前みてぇなクソガキはご免だっつの!」
「駄目よ、王様の命令は絶対なんだから。ほら、早くしなさいよ」
「………」
「………」





「うぇ…オイラ吐きそう…」
「そこまで言うかよお前…」
「うぅ、胸板のゴツイ感触が、筋肉の感触がぁ…」
「ハイハイ、三回戦いってみよー!」
「王様は誰かしら?」
「あっ、私です私!…じゃあ、一番の人が今日中ずっと、男の人だったら女装、女の人だったら男装!」
「…俺、かよ?」
「うわっアルベル!?わー、なかなか視覚的にいい感じじゃないか?」
「わ、アルベルさん?ラッキー、私アルベルさんかネルさんに当たればいいな〜って思ってましたから」
「なんでその二人なんだ?」
「あぁ、確かに似合いそうよね」
「「どういう意味だ」い」
「あっいえ気にしないでください。じゃっ、アルベルさんこれ着てくだサーイvv」
「…ソフィアちゃん、どこから取り出したの?そのドレス」
「うわ、メラフリフリレースばっかついてるじゃんよ…」
「しかも黒レースと赤レース…ソフィア、こういうの趣味だっけ?」
「ううん、ずっと前にゴスロリ好きの友達がね、誕生日にくれたの」
「俺ニソレヲ着ロト言ウノカオイ」
「はいv」
「…サイズ合わないんじゃないかい?」
「大丈夫ですよ、アルベルさん細いですしこれサイズの調整きく服ですからー」
「あたしもアルベルちゃんの女装姿見てみたーい!」
「うんうん、興味あるよな」
「化粧とかもさせてみましょうよ。面白そうだから」
「ってことで…服の上からでもいいですからねッ☆」
「…よ、寄るな触るな近づくな、動くなそれ近づけんなくたばれ阿呆っ!」
「黙りなさい撃つわよ」
「…」
「…哀レ、為ススベノナイ生ケ贄ハスデニ悪魔ノ手中ヘト堕チタ…」
「…何感慨深くつぶやいてるんだい、クリフ?」





「っあははは!お前誰!?」
「ってゆーか別人ですね、あはは!」
「おい、写真撮っとこうぜ写真!こんな格好のアルベル二度と見れねぇぞ!」
「サイズ調整きくとはいえ、横のサイズまでぴったりなんてね…ふふふふ」
「…。…っくくく、似合ってるじゃないか、くくく…」
「ひーっ腹痛い、似合いすぎじゃんよ〜!」
「アルベルちゃんかっわいー!本当に女の子みたいだねあははは!」
「…お〜ま〜え〜ら〜」
「その格好で怒ってもぜーんぜん迫力ないよ、アルベル」
「王様の命令は絶対なんでしょ?」
「…やっぱりやるんじゃなかった畜生…」
「じゃ、テンションも上がってきたところで四回戦!王様だーれ?」
「…おや、私みたいだね。じゃ、四番が恥ずかしい話を暴露」
「四番誰?」
「…僕だ……」
「わぁフェイトちゃん?」
「よかったーオイラじゃなくて」
「じゃ、聞かせてもらおうか、フェイト」
「ネルさん酷い…えーっと、うーん…。…あ、思いついた」
「もったいぶんじゃねぇよ早く言え」
「…えっとね、この間工房でみんなでクリエイションしたよね。その時、倉庫でとある物を探してたんだけど見つからなくて」
「うんうん」
「探し疲れて休憩してたら、いつの間にかうたた寝しちゃって」
「それでそれで?」
「で、起きてから慌てて戻ろうとしたんだよ。そしたらねー中でアルベルとネルさんが二人っきりで細工クリエイションしてて」
「………ちょっと、フェイト?」
「それでね、僕出るに出られなくてその場でじっとしてたんだけど、そしたらアルベルが」
「、なっ、おいちょっと待て!」
「どうしたんですかアルベルさん?今はフェイトが暴露中なんですよ〜ほらほらお静かに〜」
「フェイト、続き言っていいぜ」
「うん。で、アルベルがネルさんに、」
「な、ちょ、何言う気だいフェイト!」
「ちゅーしてごろごろ甘えてた」
「ちょ、ちょっとフェイト!?」
「サイレンス」
「…とうとう魔法まで使ったね、マリアちゃん…」
「その後さらに普段の二人とは違うような雰囲気で」
「おいてめぇ…」
「グラヴィテーション」
「…ソフィア姉ちゃん…怖いじゃんよ」
「で、最後には細工に飽きたらしいアルベルがネルさんの肩に寄りかかって寝ちゃって〜」
「…!…!!」
「ネルさんもまんざらでもなさそうにアルベルの頭なでなでしてて」
「…、って、おいてめぇ自身の"恥ずかしい話"じゃなかったのかよ!」
「うん。見てるこっちまで恥ずかしくなっちゃった、って話。僕が恥ずかしかった、って話には変わりないだろ?」
「………あんたねぇ…!」
「…よせ。真っ黒モードのあいつに敵うのはソフィアとマリアくらいしかいねぇよ…」
「…」





「四番、炭酸のジュース一気飲み!」
「ってまた俺かよ!」
「さぁさぁ文句言わない」
「…っなんだこれ、辛っ!」
「それが炭酸ってヤツなんじゃんか」
「吐くなよアルベル」
「がんばってくださいね〜」
「…………、………、くは!」
「おー飲みきった偉い偉い」
「…大丈夫かいあんた、顔が青いよ?」
「あ、アルベルちゃんが倒れた!」
「死んだかな?」
「…死んだわね」
「気にせず次いこう、はい王様誰?」
「あ、またあたしだ!じゃ一番、一発ギャグを言う!」
「うぉ、俺かよ?えーとじゃあ、教会に行くの、今日かい?」
「……さぶっ」
「…オヤジね」
「じゃあ次いこうか」
「あら、私ね。じゃ、三番が今日の買出し当番代わって買い物に行ってきて頂戴」
「また俺かよ!?もう三回目だぞ!それにそんなのアリかよ」
「アリよ。はいお金。そのまんまの格好でいってらっしゃーいv」
「きっとどこのオジョウサマが買い物に来たのかと思われるよ、アルベル」
「今のアルベルさん、かっわいいですもんねーv」
「はぁっ!?マジかよおい」
「王様の命令はぜったーい♪」
「…同情するぜ」
「…………」





「…行ってきてやったぞ!これで満足か!」
「あ、お帰りー。じゃあ次いこう」
「…あっ、アルベルさんが王様引きましたよ!私見えましたもん!」
「…五番、そこの腹黒をその辺の水辺に沈めて来い」
「はぁ?腹黒ってまさか僕の事?」
「駄目ですよ、個人を特定しちゃ」
「俺は特定なんてしてねぇだろうが。そいつが勝手に名乗り出ただけだ。…っつぅことは心当たりがあんだよなぁ?成立だ」
「…正当なのかそうじゃないのか微妙な理屈ねぇ」
「ところで五番って誰だ?」
「…私だよ」
「行って来い」
「了解」
「…へ、ちょっとネルさん、本気ですか!?」
「勿論」
「わわわわちょっと待っ、ぐっ!」
「…今の、鳩尾にクリティカルヒットしたわね」
「…ネルさん、目が笑ってないです…」
「こりゃ、さっき暴露された事根に持ってんな」
「ネルちゃん怖い…」
「フェイト兄ちゃん、生きて帰ってくるかな…」





「げほがほごほ、本気で殺す気ですかネルさん!」
「あ、フェイトが帰ってきた!」
「じゃ九回戦行ってみましょう!王様誰ですかー?」
「あっ、あたしだよあたしすごーい三回目だよ!んとね、じゃぁね、七番が二番に三十秒間くすぐりの刑!」
「え、えぇっ、私!?」
「七番は私みたいね」
「あ、せめて相手が女の人でよかったかも…」
「まぁ、そうよね。じゃあ手加減なしでいくから」
「え?…あははははっ、わーちょっと待ってくださ、きゃはははっ!ひーっやめてやめて」
「ソフィア姉ちゃんおもしれー」
「ソフィアは感度良いからね。特に耳とかうなじのあたりとか…」
「あはは、もぅ勘弁してくださいきゃはは黙りなさいフェイトあははレイ!あははは」
「ぐぁっ!な、なんで笑いながら呪文詠唱できるんだよ」
「…さぁ…」
「女ってのは怖ぇよな…」
「…二十九、三十!はい終了」
「あぁうぅ、やっと終わった…」
「ソフィアちゃん大丈夫?呼吸困難になってるよ」
「うぅ…だいじょうぶ…」
「僕は大丈夫じゃないんだけど…」
「自業自得ね」





「あ、もうこんな時間ね」
「結構な時間やってたんだな」
「白熱してたもんね。テンション上がりまくってたし」
「じゃ、次で終わりにしようか。ちょうど十回戦目だし」
「…自分に王様が回ってきたからって…」
「何か言ったかいクリフ」
「いえなんでもありません」
「じゃ、行くよ。…四番。好きな人にちゅーしてくださーい」
「うわっ来た!キスネタ!」
「…誰か絶対に言うと思ってたのよね。今まで出なかったのが不思議ってくらいだわ」
「で、誰?ちなみにあたしは違うよ〜」
「オイラも違うじゃんよ」
「…私も違うんだけど…」
「…俺でもねぇぜ。っつぅ、ことは…」
「…」
「アルベルだよね?四番」
「…なんでお前…」
「ちょーっとばかり、視界に番号が入ってきてね」
「…つまり、見たんだね」
「セコイわよフェイト」
「ま、いいじゃないか。じゃ、今ここでどうぞ?」
「………」
「…フェイトちゃん、さっき沈められたの根に持ってるね…」
「笑顔が黒いじゃんよ…」
「アルベルさんとネルさんの困るところ見たがってるだけみたいだね…」
「確かに個人は特定してないがなぁ…相手が誰かなんてバレバレじゃねぇか?ネルが固まってるぜ」
「…」
「…それはそうでしょうね」
「アルベルさん、さぁ男らしく!」
「がんばれアルベルちゃーん!」
「まぁ、視覚的にちょっとアレだから、さすがにその服は脱いでいいわよ」
「………」





「はぁ。…ったく」
「え?…うわ!っ、ん…」





「きゃ―――vv」
「うっぎゃーおねいさまぁぁぁ!」
「おーおー本当にやりやがったよこいつ」





「…これで、いいんだろう?」
「…まったく、見世物じゃないってのに」
「…あれ?」
「…お二人共、全然普通ですね」
「ネルは少し顔が赤いみたいだけど…」
「ええぇ―――、つっまんない―――」
「今回はあなたの負けだね、フェイト」
「王様ゲームもこれで終わるって明言しちゃったしね」
「ま、根に持つのも程々にしとけってこったな」
「残念だったねーフェイトちゃん。でもあたしとしては、映画ばりのらぶシーンが見れてラッキーだったけどね」
「あぅあぁぁぁぁぁおねいさまぁ…」
「…」








「…甘いね、二人共」








「…フェイト。一応聞いとくけどその手に持ってるのは何?」
「クォッドスキャナー(自己設定によりカメラ付)」
「…まさか…撮った?」
「勿論。バッチリ激写したよ、さっきのシーン」
「………」
「さぁ、どうしてやろうかな?くすくす」








「…ごめんなさい、アルベルさん、ネルさん」
「はぁ?」
「何の事だい?」
「…止められませんでした」
「「…?」」