甘党?辛党?ゲテモノ食い?



「ねぇ、あんたって苦手な食べ物とかないのかい?」
「は?苦手なもの?」
「そう。今思ったんだけど、あんたが食事とかで嫌そうな顔したのってあんまり見たことないからさ。ちょっと気になって」
「…甘いもの」
「それはもう知ってる。他にないのかい?」
「…なんだよ、急に」
「いや、なんとなく。ただ興味があるだけだよ」
「ほぅ。んなくだらねぇ理由なら答える必要はねぇな」
「…私はあんたのそういう捻くれたところが気に入らないよ」
「俺はそういう捻くれた事言うお前も気に入ってるが?」
「…っ!なんであんたはそういう…」
「あ?」
「〜〜〜っ、何でもない!と、とにかく話がずれたけど、苦手な食べ物教えてよ」
「特にもうねぇよ」
「えぇ?あるだろ何か」
「…あー。強いて言うなら」
「強いて言うなら?」
「…フッ素?」
「………え」
「だから、フッ素っつってんだろ」
「…フッ素ってあの元素記号Fで元素番号九番原子量は十九で語呂合わせの水平リーベ僕の船七曲がーるシップスクラークカルシウムの中だと船のふにあたるヤツ?」
「何故そこまで言う必要がある?まぁ当たってるが」
「…フッ素って食べ物だったっけ?」
「そうじゃねぇよ、よく歯の治療だかなんだかでフッ素を歯に塗ったりするだろ?」
「…ああ、あの甘ったるい不味いやつ?確かにあれはフッ素だけど…」
「あぁ。アレ駄目なんだ、吐きそうになる」
「………いや、確かに不味いけどさ…」
「この世の物じゃねぇよなあれ。フッ素以外ならシャロウグリーム(※カエル)の丸焼きだろうがジャイアントバット(※コウモリ)のから揚げだろうがエアードラゴンの活け造りだろうが乾汁だろうがペナル茶だろうが超絶火鍋だろうが魔界のドリアンだろうが食えるぞ。…だから言ったろうが、特にもうねぇって」
「…あんた、いったいどういう舌の作りをしてるんだい?いや、むしろ人外なのは胃袋?」
「別に普通だっての」
「…あんたが、ロジャーとスフレ作のトンデモケーキを完食できた理由がなんとなくわかった気がする…」
「あ?」
「いやなんでもないよ、あー今日も空が青いね、あははは」



ちなみに。
彼の舌がちょっとやそっとではびくともしなくなったのは、母親の超絶料理オンチが原因だったりするのだが。
誰もその事を知るわけないので、当然誰も突っ込みはしなかった。