しあわせ家族計画 お日様がさんさんと光を撒き散らしているお天気の日。 銀髪の女の子が窓を開けて、真っ青な空を眺めてにっこりと笑いました。 銀髪の女の子はカーテンを思い切り開けて、その部屋を出て隣の部屋に向かいます。 ベッドで寝ていた茶髪の男の子を引っ張ってつねって怒鳴ってがくがく揺さぶって起こした彼女は、寝ボケる茶髪の彼に朝の挨拶をしてにっこり笑いました。 おはよ、ロジャーちゃん!休みの日だからって寝坊はダメだよ! おはよぅ… まだ寝ボケている茶髪の男の子に早く準備するように告げて、銀髪の女の子はその部屋を出ました。 顔を洗おうと洗面所に向かいます。 その途中でご飯を食べる部屋の前を通ったとき、中に誰かいるのに気づいて銀髪の女の子はひょこりと覗きました。 バターをつけたパンを頬張りながら新聞を読んでいる金髪の男の人と、そんな金髪の男の人にコーヒーを運んできた金髪の女の人がいました。 はいどうぞ、クリフ。 お、悪いな。 まったりした雰囲気の二人を見て嬉しそうにしながら、銀髪の女の子は洗面所に向かいます。 顔を洗って部屋に戻り、うーんと伸びをしていると、窓の外から声が聞こえてきます。 よく知っている声だったので、銀髪の女の子はバルコニーに出て下を見下ろしました。 フェイト、今日はいっぱいお買い物しようね! わかってるって…ふぁ〜あ…。 もうちょっとシャキッとしなさいよフェイト。まぁ、どうせ昨日も夜遅くまでゲームしてて眠いんでしょうけど。 青い髪の男の子と、茶髪の女の子、そしてそれを呆れたように見ている青い髪の女の子が外にいました。 朝から元気だねと思いながら、女の子がにこにこしながらそれを見ています。 女の子は遠ざかっていく三人の背中を見送って、朝の涼しい風に靡いている木々をなんとなしに見ていました。 ふと、その木の下に誰かがいるのに気づきます。 それは銀髪の男の人で、自分の得物である刀を鞘付のままぶんぶんと振って素振りをしていました。 バルコニーから身を乗り出し、銀髪の女の子は何をしているのかと訊きました。 早朝トレーニングじゃ!まだまだ若いものには負けていられんからのう。 そんな元気な声が返ってきて、銀髪の女の子は頑張ってねーと一言告げて部屋に戻りました。 元気な銀髪の男の人を見て、散歩にでも行こうかと思っていた銀髪の女の子は、るんるん気分で歩いている茶髪の男の子を見つけました。 どうしたのかと問いかけると、 ネルおねいさまに"ぐっどもーにんぐ・こーる"がわりに挨拶しに行くじゃんよ。もしもまだお眠りになっていらしたりしたらついでに麗しい寝顔を拝見…。 …ロジャーちゃんより先に起きてるんじゃないの? うっ…でも、まだ一度も部屋から出てきてないっぽいじゃんか。 それもそうだなぁと思って、銀髪の女の子は少し納得しました。 そういえば銀髪の女の子も、今名前の挙がった赤毛の女の人の寝顔を見た事はありません。 もし見れたら面白そうだしついていこうと思って、二人は並んで赤毛の女の人の部屋に向かいました。 もうかなり親しくなっているということで、二人が急に部屋を訪ねて来ても赤毛の女の人はいつも笑って歓迎してくれます。 茶髪の男の子はおねいさまーと猫なで声を上げながら部屋のドアを開けます。 その途端、どんがらがっしゃーんと大きな音が部屋の中から聞こえました。 二人が何事かと思ってそちらを見ると、二人のちょうど正面、ドアを開けてすぐに視界に入る位置に赤毛の女の人が立っていました。 何故か、両手を前に突き出した不自然な、…まるで人を突き飛ばしたかのような体勢で。 そして赤毛の女の人の前には、運悪くそこにあった小さな机と椅子を派手に巻き込んで、プリン色の髪の男の人がぶっ倒れていました。 どこからどう見ても、女の人が男の人を突き飛ばしたというシチュエーションにしか見えません。 そんな状況に茶髪の男の子がどうしたのか訊きました。 べ、別に…。 …ってぇ………ったく、タイミング悪ぃんだよ…。 赤毛の女の人は顔を赤くさせていて、プリン髪の男の人はひじょーに不機嫌な顔をしています。 なんとなーく状況が掴めた銀髪の女の子は、慌てて茶髪の男の子をひっつかみ、お邪魔しました〜と告げて部屋から出て行きました。 そこではじめて、何で赤毛の女の人の部屋にプリン髪の男の人がいたか疑問に思ったようで、茶髪の男の子が騒ぎ出しました。 それを軽く諌めて銀髪の女の子はこう言いました。 世の中にはセンサクしちゃいけないオトナの事情ってものがあるんだよ。 やけに達観した表情でつぶやいて、銀髪の女の子はじたばたしている茶髪の男の子をずるずる引きずって行きます。 今日の朝ごはんはフランスパン食べたいなぁとそんな事を考えながら。 いつもどおりの慌しい朝が過ぎていくのでした。 「へぇ、スフレの日記、よく書けてるじゃないか」 「でしょでしょ?題名はねー、"しあわせ家族計画"!」 「家族?しかも日記に題名?」 「うん。実はこれねー、日記と見せかけて裏設定があるの。あたしとロジャーちゃんとフェイトちゃんとマリアちゃんが兄弟で、クリフちゃんとミラージュちゃんがお父さんとお母さん。アドレーちゃんがおじいちゃんで、ソフィアちゃんは斜向かいに住んでてフェイトちゃんのカノジョさんなの。で、ネルちゃんがお隣に引っ越してきたOLさんで、アルベルちゃんはネルちゃんの同僚で彼氏さん♪」 「へ〜…」 「それで〜、フェイトちゃんとマリアちゃんは双子で同じ大学。ソフィアちゃんは女子高生。あたしは中学生で、いっつも寝ぼすけなロジャーちゃんを起こして途中まで一緒に学校に通ってて〜、あ、ロジャーちゃんは小学生ね。クリフちゃんは大きな会社の社長さんで、ミラージュちゃんは秘書さん兼奥さん。アドレーちゃんは毎日素振りして腰をぐきっとかやっちゃうお茶目なおじいちゃん。アルベルちゃんとネルちゃんは毎日喧嘩の声ばっかり聞こえるんだけどとっても仲良しさん。よくアルベルちゃんがネルちゃんのお家にお泊りに来てるんだよ。ロジャーちゃんは引っ越してきたネルちゃんに一目ボレなんだけど、アルベルちゃんにいっつも蹴っ飛ばされてるんだ〜」 「………」 「ね?ハマってるでしょ?」 …子供の想像力って凄いを通り越して怖い。 フェイトはそんなことを思ったそうな。 |