武器に思い入れがあるのは、良いことだと思う。
例え、その武器がどれだけの人を殺めていても、どんな曰くがあっても。





どこでもいっしょ





「荷物が多くなってきたから、そろそろアイテム整理しないとなぁ」
「そうだね。クリエイションの失敗作とか、要らないものが多いし」
「売れるものは売っておかないと無駄に荷物が増えるだけだからね」
「じゃ、皆さんに必要なものとそうでないもの確認とらなきゃね。うっかり大事なもの売っちゃったら困るし…」
「そうだな」



「えーと…じゃあ、その他アイテムで要らないものはこれだけで良いよね?」
「うん。ホムンクルスとか売るの勿体無いなぁ可愛いのに」
「そういう問題じゃないだろ。じゃ、次は武器だね。今回は前作と違ってカスタマイズがないからシャープエッジ売っちゃったエターナルスフィア作れないシマッター!なんてことないし、攻撃力弱くて要らないものじゃんじゃん分けていこう」
「…何のこと?」





「…あ。ソフィア、それ売らないでおいてくれるかい?」
「あ、ネルさん。この短刀ですか?」
「あぁ。それ、私の父親の形見なんだよ。こっちの世界の不思議な武器には攻撃力も劣るけど、こればっかりは手放したくないんだ」
「…そうなんですか…わかりました、これはちゃんと確保しておきます」
「ありがとう。他のはもう使わないから、売ってくれて構わないよ」



「おいフェイト、今お前が持ってるその刀売るんじゃねぇぞ」
「あ、アルベル。この刀?」
「あぁ。それ、一応俺の親父の形見みたいなもんなんだ。こっちの世界の不思議な武器には攻撃力も劣るが、こればっかりは手放すと呪われそうでな」
「…そっか…。お前は呪われるようなタマじゃないと思うけど、これはちゃんと確保しとく」
「他のは弱ぇのしかねぇから好きにしとけ」





「お二人とも、お父さんの形見を大事にしてるんだね」
「そうだな。そういえば、あの二人が一緒に武器の手入れしてるのよく見たけど…。なるほどね、あれを手入れしてたんだ」
「あぁ、わざわざアイテム袋から探し出してたもんね」
「やっぱり大切なんだな。あの武器」





「…あ。ソフィア、それ売らないでくれるかい?」
「あ、フェイト。もちろん売らないよ、この鉄パイプでしょ?」
「うん。それ、僕の命を守ってくれた大切なものなんだよね。バンデーンのあのカニみたいな機械に襲われたときも、ヴァンガード三号星でスライムに出くわした時も、それのお陰でピンチを切り抜けられたわけだし…。こればっかりは手放したくないんだよね」
「…今の台詞…もし、血まみれの鉄パイプじゃなかったらすっごく良い台詞なんだろうなぁ…」
「何か言った?」
「ううん、なんでもないよ」



「…あっ。フェイト、それ売らないでほしいんだけど」
「ソフィア…。それ、って…、まさかこのひ弱な鉄パイプのことかい?」
「うん。それ、私の命を守ってくれた大切なものなんだよね。バンデーンの人に脱出ポッド囲まれて拉致られた時も、そのあと軟禁されそうになった時も、これのお陰でバンデーンの人と柔軟な交渉ができたわけだし…」
「ちょ、ちょぉぉぉっと待った。…柔軟な、交渉?」
「うん。私ね、危ないときそれ振り回して魔法の弾飛ばしまくってたら、なんだかバンデーンの対応が優しくなったの!縄もすぐ解いてくれたし、美味しいご飯も出してくれたし、お部屋もシャワートイレ付きの一番ゴージャスなとこに連れてってくれたんだよ。あと何か欲しいものがあって呼んだ時も、それ片手に持ってたらちゃんと言うこと聞いてくれたし…」
「……………」
「あ、でもね、ロキシおじさんは一番しょぼい部屋に押し込められてたんだよ。不思議だね〜バンデーンは女尊男卑なのかなぁ?それともやっぱりこの鉄パイプのお陰かな?」
「…ある意味そうだと思うけど…」
「あ、やっぱり?だからこれは私のお守りなんだv絶対手放せないよ」
「…今の台詞…もし、血まみれで変形した鉄パイプじゃなかったら…いや、なんでもないよ」





「二人とも、…命を守ってくれた武器を大事にしてるんだね」
「…そう言えば聞こえはいいが、モノがモノだろ、あれは…」
「(遠い目になりつつ)…あの二本の鈍器で、カツアゲされた貴族メンは一体何人いるんだろうね」
「(同じく遠い目)…さぁな…」





…武器に思い入れがあるのは、良いことだと思う。
例え、その武器が
どれだけの人を殺めていても、どんな曰くがあっても。