コトコト、コトコト。 「…えーと、これでカラメルシロップとやらが完成したのかい?」 「はい!あとはさっき作ったものと一緒に型にいれて、蒸すだけで出来上がりですよ」 「結構うまくいったみたいだし、出来上がりが楽しみね」 「だよね!それにしてもいいにおーい!早く食べたいなっ♪」 「そうだね。じゃ、蒸し器に入れて、と」 「これでもうできあがりだよね!」 「ええ。じゃあ、あとはのんびり待ちましょうか」 「そうね、ゆっくりしましょう」 We Love Pudding! ガチャ。 「あれ?どうしたんだよ、みんなしてファクトリーにいるなんて珍しいじゃないか」 「うん、ちょっとアイテムクリエイションをね。ネルさんに頼まれたんだ」 「え?何を作ってたんだよ?」 「ああ、"プリン"とやらを作ってたのさ」 「…え?何でまた、わざわざ?」 「ちょっと前に、クリフがアルベルのことを、"プリン頭"って言ってただろう?」 「ああ、そういえばあいつが始めて仲間になった時、そう言ってた気がしますけど…」 「ちょっと気になって、プリンって何か訊いたんだよ。そしたら、俺達の住んでた世界にある菓子の名前だ、って教えてくれたんだ。で、どんなのか気になってね。試しに作ってみようと思ったのさ」 「それで、ネルさんとファクトリーに来たら、ちょうどマリアさんとスフレちゃんに会ってね」 「オイシイお菓子作るんなら、あたしも混ぜてーって言ったんだ」 「それで、それならみんなで作りましょうか、ってことになったの」 「そうだったんだ。それで、プリン何個作ったの?」 「皆にも食べてもらおうと思っていっぱい作ったよ。フェイトの分もちゃんとあるからね」 「へぇ、それは楽しみだな」 「あたし達が腕によりをかけて作ったんだから、ゼッタイオイシイよっ!」 「…えっ…(料理タレントレベル6のスフレも作ったのか…!?)」 「なーに?何か言った?」 「いや、何も…」 「そぉ?じゃあ、そろそろできあがりだし、みんなを呼んでこよっか!」 「そうね、そろそろ呼びにいきましょうか」 「あれ、甘〜い匂いがするじゃんか。なんか作ってたのか?」 「うん、そーだよ。みんなでプリン作ったの!」 「プリンだぁ?なんでまた」 「ああ、前あんたがこいつの頭のことプリン色って言ってただろ?で、どんなのか気になったからね」 「あぁ?誰の頭がどうだって?」 「あんたの髪の色がプリンってお菓子にそっくりなんだってさ。ちょっと気になったから作ってみたんだよ」 「…阿呆が…」 「まぁまぁ。…さて、そろそろかしらね」 ピピー、ピピー、ピピーッ。 「あっ!タイマーが鳴ったね!」 「お、出来たみたいだな」 「プリンって美味いのか?メラ楽しみじゃんよ!」 「あ、でもまだ熱いから、すぐには食べられないよ?」 「それなら大丈夫よ。ネルに氷の施術使ってもらえばいいわ」 「そうですね。それじゃあ、デコレーションしてきますからちょっと待っててくださいね」 「あ、私もやるよ。ソフィアばかりにやらせるのも申し訳ないからね」 「そうね、私もやることにするわ。どうせやるなら最後まで作りたいしね」 「あっ、あたしもやりたい!デコレーションなんて楽しそうだし!」 「じゃあ、僕らはここで待ってるから」 「美味いもん作ってきてくれよー」 「楽しみにしてるじゃんよ!」 「せいぜい失敗しないようにするんだな」 「あんたは一言多いんだよ!…まぁいいや、じゃ、やってくるよ」 「トッピングかぁ…どうしようかな?」 「普通はどういう風にするんだい?」 「そうねぇ…普通のプリンだし、生クリームにさくらんぼとかが主流かしら」 「あたしは、自分の好きなようにやればイイかな〜って思うけど?」 「そうだね。スフレちゃんの言うとおり、自分が良いと思えばそれでいいと思いますよ」 「…ふーん、そうか。じゃあ、どうしようかな」 「私は生クリーム乗せるだけにしておくわ。あんまり色々なものを乗せて味が変になったら嫌だし」 「そう?あたしはいっぱいいろんなもの載せるの好きだなぁ。よーしっ、生クリームのっけてー、苺ジャムでトッピングしてー、その周りに果物並べてー、あっ、ラベンダーやバジルを飾りにするのもいいかも!あとフルーツシロップやチョコソースもかけようかなっ!」 「ス、スフレちゃん、それはちょっとやりすぎじゃないかな…」 「…まぁ、好みは人それぞれって言うし…」 「でも、あれはちょっとね…見てるだけで甘くなってくる気がするわ」 「あれ、みんなどうしたの。デコレーション、しないの?」 「あっ、なんでもないよ。じゃ、じゃあ私は、生クリームとフルーツにしようかな。あと、ハーブをのせてちょっとオシャレにしたいな」 「私は…そうだね、普通に生クリームとさくらんぼにしようか」 「あっちで待ってる男共の分はどうしようかしら?全部トッピング無し、はさすがに可哀想だし」 「みんなが二個ずつデコレーションすればいいんじゃない?そうすれば、バリエーション豊富でお得だよっ♪」 「うーん、何がどうお得なのかはよくわからないけど…そうしましょうか。皆さんもそれでいいですか?」 「OK。そうしようか」 「構わないわよ」 「じゃあ、誰が誰の分作るの?あ、もちろんフェイトちゃんの分はソフィアちゃんだよね」 「えぇっ!ど、どうしてそうなるの?みんなに自由に選んでもらえば…」 「…それだと、スフレのが最後に余りそうだね」 「同感だわ」 「えー、なんでなんで?」 「あ、えっと、深い意味はないから、気にしないでねスフレちゃん」 「…やっぱり、自由選択性はやめようか」 「うーん…そうね、取り合いになったら嫌だしね」 「じゃあ、やっぱりフェイトちゃんにはソフィアちゃんのだね!」 「え、…う、うん」 「私は…そうだね、あのプリン頭に嫌がらせしてやろうかな」 「あら、アルベルにするの?じゃあ私は…一応お世話になってるし、クリフにあげることにしようかしら」 「じゃ、あたしはロジャーちゃんしかいないじゃん。…ま、いっつもナマイキなことばっか言ってるし、あたしのほうがお姉さんだってこと証明できるチャンスだよね!」 「…そ、そうだね…。じゃ、早くデコレーションしちゃいましょうか!」 「だね、あいつらも待ちくたびれてるだろうし」 「そうね。じゃあ始めましょうか」 「がんばっていこー、おー!」 「プリンかぁー…食べるの何年ぶりかな?」 「あんまり食べる機会とか、ねぇもんな」 「オイラなんて、食べるのも見るのも初めてだぞ」 「俺らの世界にはねぇんだから、当たり前だろうが」 「ああそうか、ロジャーとアルベルはプリン見たことないんだったね」 「その割に、プリンによく似た髪形のヤツが一人いるけどなぁ?」 「お、それってこいつのことだな!?」 「…てめぇら、喧嘩売ってんのか」 「あーもうアルベル、落ち着きなってば」 「完成ー!」 「上手に出来たね」 「うん、結構美味しそうだね」 「上出来ね。じゃあ各自持っていくとしましょうか」 「出来たよ!はい、フェイトの分」 「あ、サンキュ。それにしても、ソフィアがお菓子作るなんて久しぶりだな」 「そうだね。この星に来てからは、フェイトに作ってあげられる機会がなかったもんね」 「いろいろあったからな。こうやってゆっくりできるのも、久しぶりだよな」 「うん。それより、どうかな、味のほうは。結構上手に出来たと思うんだけど…」 「あ、うん。美味しいよ」 「よかった。プリン自体はみんなで作ったから大丈夫だと思うけど、トッピングで失敗しちゃったらどうしようって思ってたんだ」 「上出来だと思うよ。これならギルドに特許申請できるんじゃないかな」 「本当?よかった!それなら食べる前にテレグラフで申請しておけばよかったかなぁ。…でも、これってまさか未開発惑星保護条約にひっかかったりしないよね?」 「大丈夫だろ。あんな有名無実の条約、誰も気にしてないさ(笑顔)」 「そうだね、バレなきゃいいよね♪バレても今更だし、どうってことないよね(さらに笑顔)」 「………」 「何プリンとにらめっこしてるのさ。食べないのかい?…あぁなるほど、共食いはしたくないんだね」 「誰が共食いだ!」 「あんただよ。そっくりじゃないか、そのややっこしい髪の色と」 「…てめぇだってこの果物とそっくりの髪の色してんじゃねぇか」 「え?ああ、さくらんぼのことかい?まぁ確かに色は似てるかもしれないけど、あんたほどじゃないさ」 「同じようなもんだろうが、阿呆」 「阿呆はあんただろう。…でもまぁ、あんたはこんなに可愛らしくないからね」 「あぁ?」 「このお菓子みたいに可愛らしくないだろ、あんたは」 「だからなんだってんだ」 「別にどうだってわけでもないけどさ。…そういえば、味のほうはどうだい?」 「…甘い」 「それはそうだろう、お菓子なんだから。本当はあんた用に甘さ控えめのを作りたかったんだけどね。みんなで同じように作ったから、一つだけ味を変えるとかはできなかったんだよ」 「…ふぅん」 「ま、今度はあんまり甘くないのを作ってやるよ。機会があればね」 「俺は別にこのままでもいいが」 「えっ?」 「…このままでも、別に不味くはない、と言ったんだ。二度も言わせるな阿呆」 「…それは、美味しかった、という意味に解釈していいのかい?」 「さぁな」 「…まぁ、とりあえず、ありがとうと言っておくよ」 「ふん、勝手にしろ…」 「ロジャーちゃん!あたしの作ったプリン、食ーべてっv」 「なんでオイラが…」 「あたしの作った物じゃ嫌だって言うのー!?」 「オイラはネルおねいさまのが食べたいんだよ!」 「えー、それは無理だよ。ネルちゃん、アルベルちゃんに作ってたもん」 「が――ん!な、なんであんなプリン頭に!」 「そんなこといいじゃない、ほぉらぁ、食べてよぉー!」 「ぎゃーす!そ、そんな甘ったるそうなもの食えるかー!」 「お菓子なんだから甘いのは当たり前でしょ!」 「そ、それにしたってなぁ、なんでプリンにラベンダーが載ってるんだよぅ!それと、まわりに並べてある見たこともないようなのは何だよ!」 「え、これ?マンドレイク」 「!? マンドレイクって…」 「うん、果物だよね?美味しそうだったから並べてみたの」 「…ついでに、このプリンにかかってるピンク色の液体は…」 「それ?ハッピーポーションだよ。なんか、幸せになれそうな名前だったからかけてみたの!」 「えぇっ!?そ、それって確か麻痺状態になるやつじゃ…」 「そうだっけ?でも大丈夫、万が一そうだったとしても、バジルも載せてあるからさっ♪」 「(フォローになってねぇじゃんよ!)」 「じゃ、説明はもう十分でしょ?ほら、食べて食べてー!」 「ぎゃぁあ――っ!」 「あっ、なんで逃げるのよぉ!待ちなさい、ビヨーンド・ルアー!」 「うわー!ぎゃー!放せこのヤロー!」 「暴れないでよ!ドリームコンボも食らいたいの?」 「…(拷問だ…!)」 「はぁ…相手がいる奴らはいいよなぁ」 「同感だわ…。…でもクリフ、あなたにはミラージュがいるじゃない」 「ここにいねぇだろうが、今ここに。だいたい、ミラージュがプリン作って俺に持ってくるなんて想像できるか?」 「…ちょっと、想像し難いわね」 「だろ?」 「でも、私が作ってあげたんだからいいと思ってよ」 「まぁな。とりあえず礼言っとくぜ」 「とりあえず、いつも何かとお世話になってるしね」 「ま、一応有り難く貰っといてやるよ」 「何よそれ。もうちょっとちゃんとお礼言いなさいよね」 「あーはいはい。…それにしても、料理なんて面倒だからやらないっていつも言ってたお前がプリン作ってくるとはな」 「意外かしら?」 「そりゃなぁ。ま、ソフィアやネルがついてたんだ、味はマトモだろうな」 「…ちょっと、それどういう意味よ」 「えっ!?いや、それは言葉のアヤってやつでな、別にお前が作ったものに不安があるっていうわけじゃ…」 「ふぅん…そう、そんなに私の料理の腕が信じられないっていうのね?」 「いやぁ、そういうわけじゃ…」 「そこまで言うんだったら、私一人でもちゃんとしたものを作れるんだって証明してあげるわ!」 「えっ?おい、何する気だ」 「決まってるでしょ、アイテムクリエイションよ!」 「お、おい止めとけよ、お前料理レベルそれほど高くないだろうが…。ネルかソフィアに手伝ってもらったほうが…」 「それじゃ意味がないでしょう?いいからあなたは黙ってて、不安があるだなんて言わせないような美味しい料理を作ってあげるんだから!」 「…へいへい」 「…あーあ、なに暴れてんだろうな、あの二人。ファクトリーが壊れたらどうするつもりなんだよ」 「あの二人って、スフレちゃんとロジャーのこと?大丈夫だよ、いつものことじゃない」 「そうなんだけど、あの二人もよく飽きずに毎回暴れまくるよなぁ」 「飽きないといえば、いっつも飽きずに口げんかしてるネルさん達は今日珍しく静かだね」 「ああ、確かに珍しいよな…。珍しいといえば、なんでマリアがすごい形相でアイテムクリエイションしてるんだ?」 「さぁ…。今日は珍しいことばかりだね」 |