「ねぇねぇみんな聞いてー!コイビトの理想の身長差って、15センチなんだって!」





Even the dog doesn't eat!





「へぇ、そうなの?」
「ふーん…そうなんだ」
「おっ、そりゃ初耳だな」
「オイラも初めて聞いたぜ」
「あら、そうなの」
「ふぅん」
「…だからなんだ」
「んもー、相変わらずアルベルちゃんは夢がないなぁ。まぁ、それは置いといてぇ〜…あたしと15センチ差の男の子、もしかしてこの中にいたりしない?ちなみにあたしは132センチだよっ♪」
「残念だけど、それはないよスフレ。君と15センチ差って言ったら、せいぜい150センチだろ?」
「ちぇーっ。いいよいいよ、もうちょっと経ったらおっきくなって、ステキなコイビト見つけるもーんだっ!」
「まぁまぁスフレちゃん」



「…ところで、フェイトって、何センチだっけ?」
「え?…えーと、177だったかな?計ったのこの星に来る前だから、今はどうかわからないけど」
「…そう。あーあ、惜しいなぁ」
「…何が惜しいのかしら、ソフィア?」
「え?…いえ、もうちょっとでフェイトと15センチ差だったのにな〜って」
「あらそうなの?偶然ね、私も同じようなことを考えてたわ」
「そうなんですか?ちなみにマリアさん、身長はどれくらいなんですか?」
「…168センチよ。それが何か?」
「あらそうなんですか。じゃあフェイトとは9センチ差なんですね」
「そういうあなたは何センチなの?」
「私ですか?160センチですよ。フェイトとは17センチ差ですから、私の方が15センチに近いですね」
「へぇ〜…それはそれは。でもはっきり言ってこんなの俗説よね。そんなにアテになるものじゃなさそうだわ」
「何言ってるんですか。こういうジンクスとか、そういう類のものは信用できるもののほうが多いんですよ?」
「…ちょっと、二人とも…」
「「フェイトは黙ってて!」」
「…はい…」
「女ってのは、怖ぇよな…」



「…そういえばクリフ、君は何センチなんだい?いやにバカでかいけど」
「お前さりげに毒舌だな…。…あーっと、196だったか?」
「ふぅ〜ん、じゃあもし15センチ差っていったら、約180センチって事?」
「そうだな」
「…そんな女性がいるのかどうかは疑問だけどね。もうちょっと縮んだら?」
「うるせぇ!」
「あれ?でもさ、確かミラージュさんって僕より大きかったよね」
「あ?あぁ」
「でも僕の記憶から考えると、アルベルよりは小さかったと思うんだけど」
「そんくらいだろうな」
「って、事は約180センチじゃないか。良かったねクリフ、君と並んでも引けを取らない女性が近くにいて」
「(…実は181でジャスト15センチ差っつぅことは言わねぇほうがよさそうだな…)」
「ん?何か言った?」
「…や、別に」



「あーあ、ソフィアもマリアも、たかだか身長差くらいであんなに張り合わなくてもいいのに」
「そうですよねおねいさま!15センチが理想の身長差なんて、嘘ですよねー!デカブツやそこのプリン頭みたいに、デカけりゃいいってもんじゃないですよ」
「調子に乗るんじゃねぇよこのチビが」
「ぐぇっ、放せよこのプリン!おねいさまとオイラの楽しい時間を壊すなー!」
「ああ?誰がプリンだ、誰が!」
「お前以外にいないだろーがこのバカチン!さっさと放せ!」
「おらよ」
「ぎゃーす!痛いじゃんかよぅこのバカチン!急に放すんじゃねぇよ、顔から落ちたじゃんか!」
「放せと言ったのはお前だろうが、阿呆」
「うるせーよっ!ちょっと身長があるからって偉そうに!」
「お前が小さいだけだろうが」
「ぐぬぬぬぬぅ〜…っ、人が気にしてることを!」
「あんたらねぇ、さっきも言ったけど身長なんかで低レベルな争いするんじゃないよ」
「はい、おねいさまv…ん?身長といえば…おい、バカチン。お前何センチだ?」
「あぁ?」
「だーかーら、お前の身長どんだけかって聞いてんだよ」
「なんでそんなことてめぇに言わなきゃならねぇんだよ」
「いいじゃないかそれくらい。私も興味あるしね」
「…なんでお前まで…」
「それぐらい聞いたっていいだろう?もしかして、誰かと15センチ差かもしれないよ」
「…確か…185だったか?」
「…えー!?おねいさまと14センチ差じゃんかよー!」
「あぁ?お前なんでこいつの身長なんて知ってんだよ」
「へっへーん、おねいさまのことでオイラに知らない事はない!」
「…で?お前何センチなんだ」
「…171センチ…」
「ああっやっぱり14センチ差じゃねーか!このプリン!もうちょっと縮め!」
「あぁ!?何阿呆なこと言ってやがる」
「もーちょっとでおねいさまと15センチ差じゃんかよ!そんなん許さねーぞ!」
「あんた、さっき15センチが理想的なんて嘘だって言ってなかったっけ?…それに、何で私の身長なんて知ってるんだい」
「そ、それはですね…えーと…」
「えっ、なになにー?誰が誰と何センチ差なの?」
「(おっ、助かった!)おねいさまとこのプリン頭が14センチ差なんだよ。うームカつく」
「えっ、ほんと?じゃあ、この中じゃ一番お似合いってことなんだ?」
「「「はぁっ?」」」
「だってそうでしょー?一番15センチ差に近いじゃん!」
「へぇー、ネルさんとアルベルがねぇ」
「じゃあ、やっぱりこれって信用できるジンクスなんですね!」
「ちょっとソフィア、それはどういう意味だい?」
「だってお二人とも仲いいじゃないですか」
「だよなぁ。若い奴らはいいねぇ」
「誰がこんな口うるさい女と…」
「聞き捨てならないね、私がなんだって?」
「うるせぇからそのままうるせぇって言ったんだよ阿呆」
「それはあんたが人に迷惑かけてばかりな性格だからだろう?私は理由もなく口うるさいことは言わないよ」
「あぁ?」
「…おや、自覚ないのかい?だったら教えてあげるよ。口も悪ければ寝起きも悪いし、つまらないことですぐにキレる。他人に干渉されたりするとすぐ不機嫌になる上に、そのくせ自分のことはまるで無頓着で無関心。さらに後先考えずに行動するから戦闘では怪我ばかりする。…その度に私がヒーリングしてやってるの、忘れたわけじゃないだろう?」
「……ああそうだよ、悪いか」
「おや、案外素直に認めたね。とりあえずそんな性格だって自覚はあったんだ」
「うるせぇよ。…それを言うならお前だって、自分のことはまるで無頓着で無関心じゃねぇか」
「…何のことだい?」
「お前戦闘で怪我しても、自分後回しで他の奴らの回復ばかりしてんじゃねぇか。気付かれてないとでも思ってたのか?」
「それは…」
「さらに言うと口うるさいしお節介、つまらないことですぐに悩む。しかも規律とかにいちいちうるさい上に一度決めたら梃子でも意見を曲げやしねぇ」
「…悪かったね。元からこういう性格なのさ」
「なら人の性格をどうこう言うんじゃねぇよ」
「あんたよりはマシだよ!」
「なんだとテメェ!」



「…あーあ。また始まっちゃったよ」
「放っておきましょ。本っ当に日常茶飯事じゃない」
「でも、見てると微笑ましくていいですよね」
「まったくだ。…それになんだかんだ言って、お互いのことわかってんじゃねぇか」
「だよねー、じゃないとあそこまで言えないよね」
「おいこらプリン頭ー!おねいさまの悪口言うんじゃねぇよ!」
「やめときなよロジャー。痴話喧嘩は犬も食わないって言うだろう?邪魔しないようにしなきゃ」
「…それを言うなら、夫婦喧嘩よ」
「でも、あながち外れてないですよね。喧嘩するほど仲がいい、とも言いますし」
「それはそうだな。それに、嫌よ嫌よも好きのうち、って言葉もあるしな」
「まぁ二人とも、なんだかんだ言ってても仲良しってことだよね!やっぱり15センチ差に近ければ近いほど、お似合いなんだねv」
「あぁーおねいさまぁー…」
「諦めなよ、ロジャー」
「そうよ。もし、あの二人の間に割って入れるような人がいたらよっぽどの勇者ね」
「…うわぁ、ほんとだ。ちょっと見ないうちにすごい喧嘩になってますね」
「うへーおっかねぇな。ありゃあ両方手加減なしだぜ、きっと」
「文字通り、命がけってやつだね!巻き込まれないうちに逃げよっか?ほら、行くよロジャーちゃん」
「お、おいこら引っ張るなよ!おーねーいーさーまー…!(フェードアウト)」



「…まぁ、結論としてさ。あの二人は15センチ差だとか関係なく、仲がいいってことだね」
「そうね」
「そうですね」
「その通り、だな」
「うんうん、まったく同感!」





「…同感、じゃねぇよー!!!!」





その後、ロジャーが身長を気にして、毎日牛乳三本を飲み下し始めたとか。
フェイトが面白がって元牛乳を飲ませようとしたとか。
マリアがそれを見なかったフリで遠巻きに眺めているとか。
ソフィアがさりげにロジャーの料理だけカルシウムを多めにしてあげたとか。
クリフがロジャーをからかって低レベルな言い争いをしたとか。
スフレが見るに見かねてラーニングリングを作ってあげたとか、いろいろあったが。



結局。
あの二人は、いつもと変わらず仲良く命がけの痴話喧嘩ばかりしていたそうな。





三日後。
ロジャーは牛乳の飲みすぎでお腹を壊しました。