「酒が飲みてぇなぁ…」
「なんだよクリフ。オヤジみたいなこと言って」
「だぁってよ、この頃アイテム管理してるソフィアが"お酒だってタダじゃないんですよ!勝手に飲んだらダークサークルで吸い込みますからね!"って言って飲ませてくれねぇんだよ」
「あのね、それはあなたが半端じゃない量飲んで、さらに後始末もせずに倒れるからでしょう?程々にしておけばソフィアだって禁止したりしないわよ」
「そうですよ。後片付けするこっちの身にもなってください!」
「うわ!いたのかマリア!それにソフィアも」
「お化け見たみたいな顔しないでよ、もう。それはそうとさんぞうしゅなら飲んで良いわよ?」
「そうそう、クリフさんがクリエイションで失敗してできたさんぞうしゅなら持ちきれないほどありますから」
「…さりげにキツいな」
「自業自得だね、クリフ。料理レベル低いくせに評価75の南部美神作ろうとするから失敗するんじゃないか」
「………」
「…ところでクリフさん、そんなにお酒が飲みたいんですか?」
「あ?ああ」
「だったら、今日だけ特別にみんなでお酒飲みましょうか?」
「何っ!本当か!」
「ただし、飲みすぎないこと。それと、自分でちゃんと後片付けとかしてくださいよ?じゃなきゃ本当にダークサークル使いますからね」
「ああ、任せとけ!」
「いいのかい、ソフィア?」
「うん。たまには息抜きしないと、ね。フェイトだって、久しぶりにお酒飲みたいでしょ?」
「まぁ、確かにね。じゃあ、今日はみんなで飲み明かそうか!」
「ちょっと待って?確か、地球では未成年は飲酒禁止って法律があるって聞いてるんだけど、違ったのかしら?」
「え?そんなの気にしないでいいって。マリアだって飲んだことあるだろう?」
「確かにクラウストロじゃそういう法律はないから、飲んだことくらいはあるけど…」
「でしょう?あんなの誰も気にしてないですよ〜。特に私達なんか普段家に親がいませんでしたから、飲み放題だったよねーフェイト」
「そうそう。普通に冷蔵庫にビールとか入ってたもんな。大体、他の星では飲めるのに僕たちの星だけが飲めないなんて不公平だと思うしね」
「………」
「ま、まぁとりあえず今は法律とか気にすんな!今夜は無礼講でいこうぜ!」
「…そうね。じゃあ、ネル達も呼んできましょうか」
「スフレちゃんとロジャーはどうしようか?お酒とか飲むかなぁ」
「大丈夫だろ。まぁどうしてもダメだったらジュースか何か用意すればいいし」
「じゃ、呼んでくるわね。準備のほうをお願い」
「任せてください♪」





Liquor pond meat forest!





「…一体何の騒ぎだい、これは」
「あぁ、ネルさん。今日はみんなで飲もう!ってことになったんですよ」
「え、お酒飲めるの?やったぁ!一回飲んでみたかったんだよねー♪」
「あ、スフレちゃんはお酒大丈夫みたいだね。ロジャーは?」
「え、オイラ?…まぁ、そんなに飲んだことはない、けど」
「所詮ガキだな」
「なんだとバカチン!オイラだって少しくらいは飲めるじゃんよ!」
「じゃあ、ロジャーも大丈夫ね。フェイト、ジュースの用意はしなくていいみたいよ」
「了解ー」
「じゃ始めるとすっか!無限に飲むぜ!」
「ちょっとクリフ!あなた、ぜんぜん反省してないわね!」
「いいですよー。もしも酔いつぶれてそのまま後片付けもせずに寝ちゃったら、ダークサークル使うだけですからあははは」
「…ソフィアちゃん、なんだかいつもとテンション違うよ?」
「ああ、ソフィアお酒入ると笑い上戸になるから」
「なぁに言ってんのフェイト〜そんなことないってあははは♪」
「…へぇ、意外だね」
「…タチの悪い酔い方しやがるな」
「まだソフィアはマシだって。うちなんか母さんが怒り上戸でさ、飲むたびに僕に絡んでくるんだよ」
「へぇ、そうなのか。怒り上戸といえば…マリアもそうだぜ?」
「…ちょっとクリフ、誰が怒り上戸ですって!大体、飲むたびにいつも私に迷惑かけるのはあなたでしょう!」
「…うわ、本当じゃんよ…」
「ロジャー、今何て言ったのかしら?言っておくけど私は本当のことを言ってるだけよ!」
「あははは〜、マリアさん怖〜い」
「さすが、血は争えないね…で、どうするんだよ。よりによって僕の手には負えない二人がこんなんだったら、収集つかなくなるぞ」
「俺に訊くなよ…俺だって手に負えねぇよ」
「…俺は向こうで飲んでくる」
「…私も退散するとしようか」
「ちょっと、アルベル!ネルさんまで!」
「じゃあオイラも、巻き込まれたくないから逃げるじゃんよ…」
「あれ、ロジャーちゃんあっち行っちゃうの?だったらあたしも行くー!」
「お、おいロジャーにスフレ!」
「…クリフ、君は逃げないよね?」
「え…」
「ちょっと、誰から逃げるですって!さっきから人をお化けみたいに言って!いい加減にしないと怒るわよ!」
「…もう怒ってるじゃないか…」
「フェイト、ぜんぜん飲んでないじゃない〜?もっと飲みなよ、あははははっ」
「ちょ、ソフィア、お前飲みすぎだぞ!」
「いーじゃない〜、フェイトお酒に弱いわけじゃないんだからさ〜あははは」
「さ、酒に弱いっていえばさ、アルベルって酒に弱そうだよね!」
「アルベル?確かにそうね。って、なに話逸らしてるのよ!今は関係ないでしょ!」
「でも、弱そうだよな。今度酒飲み勝負でもしてみっかな」
「あははは、クリフさん、思い立ったが吉日ですよ!これだけお酒飲める機会なんてそうそうないですし〜、今行ってきたらどうですか〜?」
「そ、そうだな、ちょっと行ってくるか!」
「ちょ、ちょっとクリフ!?僕を見捨てる気!?」
「見捨てるって何?そんなに私たちと一緒に飲みたくないってわけ?さっきから失礼なことばっかり言って!」
「あははは、飲み比べだ〜♪どっちも頑張れ〜!」
「じゃ、じゃあちょっくら行ってくる!(大運動会走りで逃げダッシュ)」
「…恨んでやるぅぅぅぅぅ(貴族メン?)」





「おいアルベル!俺と飲み比べしねぇか?」
「あ?」
「おや、面白そうじゃないか。やってみれば?」
「おー!勝負だ勝負だ!」
「勝負?オイラも参戦するじゃんよ!」
「お前がかぁ?酒弱そうだな」
「奇遇だな、俺もお前と同じ意見だ」
「同感」
「あぁっそんな、おねいさままで…」
「だって、ロジャーちゃんお酒とか弱そうに見えるもん」
「…ムカ。だったら酒飲み勝負で真の男を決定するじゃんよ!」
「本気でやんのか?」
「…俺は結果の見えた勝負はしない主義なんだがな」
「なんだとこのプリン!お前だって酒に弱そうじゃんよ!」
「確かにアルベルちゃんも弱そうだね」
「てめぇら…」
「まぁ、勝負してみりゃわかるこった」
「だね。じゃあ、せいぜい吐かない程度にやんなよ」
「わーい勝負だ勝負だ!」





「あははは、ロジャーもやるんだ〜!おもしろ〜い!」
「…えっ、ロジャーまで?」
「へぇ〜、それは興味あるわね。実はすごく強かったりして」
「(やった、マリアとソフィアの気がそれた!)じゃあ、僕らも行って観戦しようか?」
「そうだね、面白そう!」
「そうね、行ってみましょうか」
「(…助かった………)」





「あ、みんなも来たんだ!」
「うん。面白そうだったからね〜」
「今のところ、どんな状況かしら?」
「ああ、まだ三人ともほとんど酔ってないね」
「まだ始まったばかりだしね。そうだ、どうせなら誰が勝つか賭けてみない?ポケットマネーでさ」
「あっ、面白そうだね♪やろうやろう!」
「じゃあ私はクリフに500フォル。小さい時から見てるし、結構飲むわよ彼」
「なら、私もクリフさんに…えーと、500フォル!」
「じゃあ、僕はやっぱりクリフに800フォル」
「みんなクリフだと面白くないじゃない。フェイト、それにあなた男でしょ、もっと大穴に賭けなさいよ!まったく、変なところで小心者なんだから!」
「…ま、まぁまぁ」
「じゃああたしはねー、ロジャーちゃんに1000フォル!」
「スフレちゃんやるね〜!」
「ほら、スフレのほうが度胸あるじゃない!まったく、私の弟とあろうものが情けないわね!」
「…そんなこと言われたって。…あ、ネルさんはどうします?」
「アルベルに2000フォル」
「えっ!?ネルさん、本気ですか?」
「おー!ネルちゃん太っ腹!」
「すごーいネルさん、2000フォルですか?強気ですね〜ふふふふ」
「まぁね。…今回は自信あるよ」
「「「「…え?」」」」





「…なかなかやるじゃん、デカブツ。ひっく」
「…お前も、ガキのくせによく飲むじゃねぇか。うぃっく」
「そんな余裕かましてていいのか?顔赤いじゃんよ」
「お前こそ、頭がぐらぐらしてんじゃねぇか。そろそろ降参したほうがいいんじゃねぇか?」
「へへーん、まだまだっ!」
「俺だってまだまだいけるぜ。ガキにゃあ負けねぇよ」
「…低レベルな争いだな」
「「なんだとこのプリン頭!」」
「…本当のことを言っただけだろうが。…おい、どうせならもっと強い酒よこせ」
「はいはい。ったく、人使い荒いねあんたは」
「えっ!?」
「おい、何強がってんだよてめぇ」
「この程度の酒で飲み比べなんざできねぇからもうちょっと強いやつにしようってんだよ、阿呆が」
「…ん?よく見ると、こいつ顔色とかいつもと変わってないじゃんよ…」
「それに、普通に座ってねぇか?飲むペースは俺らと同じだったはずなのに…」
「…? なんだよお前ら、まさかこれで終わりじゃねぇだろうな?」
「! んなわけねぇだろうがバカチン!」
「なら、いいんだがな」
「ちょっとアルベルー、香炉と酔迎とソバ焼酎(笑)、どれがいいんだい?」
「あ?いつものねぇのか?」
「船中八朔のことかい?あんたねぇ、あんな高い酒を飲み比べに使う気!?何本もあるわけじゃないんだからちょっとは自粛しな!」
「…あーうるせぇな。どれが一番強い?」
「香炉かな?」
「じゃ、それ」
「はいはい」
「…なぁ、デカブツ」
「…なんだよクソガキ」
「…あのさ、オイラの記憶が正しければ、香炉ってめちゃくちゃアルコール高くなかったっけ?」
「…やっぱ、お前もそう思うか?」
「なんだよお前ら、飲まねぇのか」
「…ってうわっ!一気飲みしてるじゃんよ!」
「…しかも、顔色ひとつ変えてねぇぞ…」
「…。もしかしてこいつ…」
「…酒にめちゃくちゃ強い…?」





「…見た?ソフィア」
「見ました!ばっちりしっかり!」
「あたしも見たよ!すごいね〜!」
「え、何が?ああ、アルベルが強い酒飲んでること?確かにすごいね」
「違うわよフェイトったら!もう、鈍感ね」
「確かにそれもあるけど…。私たちが驚いたのはそこじゃないよ」
「?」
「んもー、ヲトメゴコロがわかってないなぁフェイトちゃんは」
「アルベルさんとネルさんのやり取りにびっくりしたんだよ。だって、まるで夫婦みたいじゃなかった?」
「…。ああ、言われてみれば」
「フェイトもそう思うでしょ?」
「だって、なんか、「おいばあさんあれ」「ハイハイあれですねおじいさん」みたいな会話だったよね〜!」
「うらやましいなぁ、いいなぁ」
「あれだけ仲いいのにただの仲間ってのも変な話よね」
「そうだね…。あ、決着着いたみたいだよ?」
「えっ!?」





「…くかー、くかー」
「ぐごぉぉぉぉぉぉ」
「…何しに来たんだ、こいつら」
「おや、勝負ついたかい?」
「見ての通りだな」
「…あーあ、結局寝ちまったのかい?やれやれ、こいつらどうしようか」
「放っとけ。自業自得だ」
「それもそうだね」





「…結局、アルベルが勝ったみたいね」
「えー、嘘ー。ロジャーちゃん負けちゃったの〜?」
「あーあ。ネルさんの一人勝ちかぁ…」
「ったく、クリフもあんだけ豪語しといて…僕の800フォルどうしてくれるんだよ」
「まったくだわ」
「本当にそうですよね。しかもクリフさん、あれだけ言ったのに寝ちゃうなんて…寝てるうちにダークサークルで吸い込んじゃおうかなぁ(ボソリ)」
「…ソフィア、さすがにそれはやめときなよ」
「え?どうしようかなぁ、あはははv」
「そういえば、ネルちゃんなんでアルベルちゃんがお酒に強いって知ってたのかなぁ?愛のチカラってやつ?」
「ああ、そういえばネルさん、よくアルベルと一緒に酒場で酒飲んでたっけ」
「え?そうだったの、知らなかったわ」
「うん。で、何でかって訊いたら確か"私と同じペースで飲めるの、あいつくらいしかいなくてね"って」
「…え?じゃあもしかしてネルさんもあれくらい強いってことなのかな…」
「あ。…確かに、今考えてみると、そうとも取れるな」
「って、フェイト。あなた今の今まで気づかなかったの?」
「うん。忘れてた」
「…フェイトちゃん。もうちょっとしっかりしてよ」





「さてと。船中八朔まだあんだろ?」
「は?あんた、まだ飲む気かい?」
「当然だ。…お前も付き合え」
「はいはい。ところで、ありがとう。あんたのお陰で儲けさせてもらったよ」
「…は?」





次の日。
フェイトが目覚めると、笑顔全快のソフィアが何故か杖を持ったまま、クリフの寝ていた辺りに立っていたらしい。
ついでに、マリアの証言によると、
「寝てる時に、"すべてを飲み込め、無限の闇よ!"(ダークサークル発動時のレアボイス)って声が聞こえた気がするのよね〜」
だそうだ。
その日一日クリフの姿を見たものはいなかった。





本日の教訓。
酒は飲んでも(ソフィアのダークサークルに)飲まれるな。