注意!
この話は、今までになくアルベルが壊れています。
背景を見てもわかるように甘めです。糖度三割増しです(笑)
ギャグだと笑い飛ばせる方以外は、ここで即座にブラウザバックすることをお勧めします。
ありえないアルベルでも許せるよ★って方だけ、スクロールしてください。













ある日のこと。
フェイト達一行は緑豊かなイリスの野で戦闘をしていた。レベルアップとフォル稼ぎのためだ。
このあたりに急に出没しだした断罪者や代弁者を相手に戦えば、なかなか良い経験値稼ぎになるし、フォルも溜まる。
フェイト達は一日中戦っていたためだいぶレベルも上がり、その辺を我が物顔で闊歩している断罪者やら代弁者やらを蹴散らせるくらいにはなった。
そろそろ帰ろうか?ということになり、ぺターニへ向かう。と、また敵が寄ってきた。
今の彼らのレベルだと、雑魚も同然なのだが、何しろ数が多い。
倒したと思えばまた邪魔するヤツがいて、いい加減イライラしてくる。
「ネルさん、後ろ!」
ネルがそんなことを考えながら戦っていると、横からソフィアの焦った声が聞こえてきた。
目の前の敵を倒すことに集中していた彼女の後ろに、どうやらもう一匹敵がいたらしい。
ネルが弾かれたように振り向くと、両手を振りかぶって今にも攻撃を繰り出そうとしている白い天使、代弁者がいた。
避けられない、そう思って身構える。
と。
「焼き尽くせ!」
そんな声が代弁者の後ろから聞こえて、同時に紅い色の竜が代弁者を飲み込んだ。
代弁者が完全に息絶えたのを確認して、ネルは最初に相手をしていた断罪者を片付けた。
そこで戦闘は終了する。
「…ふぅ。一応礼を言っておくよ」
相手がどういうつもりだったかは知らないが、助けてもらったのは事実だ。
ネルはそう思って、あの竜を放ったアルベルに向き直って一応礼を言った。



ら。



事もあろうに、その台詞を聞いたアルベルは、満開の笑顔で
「気にするな。次からは気を抜くんじゃねぇぞ?」
とか優しく言ってのけたもんだから。



これは間違いなく夢だ。



ネルはそう即座に思った。





そのまま





「………え?」
呆けた声で、ネルはなんとかそれだけ言った。
今、私は多分変な顔をしているんだろうな、とネルは自分でも思ったが、直している余裕はなかった。
そんなネルを見て、アルベルはきょとんとした顔で首をかしげている。
「ネル?」
いやあんたがそんな子供っぽくて可愛らしいしかもなんの抵抗もなくきょとんとかいう効果音がつくような仕草してしかも滅多に呼ばない私の名前普通に言ってるから驚いてるんだってば。
ネルはそう大声で言ってやろうと思ったが、声が出なかった。驚きのあまり。
…これはどう考えても夢だろう。
そう思って、ネルはアルベルのひらひらした後ろ髪を試しに引っ張ってみた。
「痛っ!なんだよ、俺なんかしたか?」
アルベルは声に出して痛がる。しかもいつもとはまったく違う怒り方で。
…ああ、夢じゃない。現実?現実なのか?これが現実だっていうのかい?
ネルは頭が痛くなってきた。
普段のアルベルなら、"何しやがんだてめぇ!喧嘩売ってんのか!"くらいは言い返してくるだろう。
それがどうしたことか、今のアルベルは文句を言わないばかりか自分に非があったかどうか訊いてきた。
信じられない。
ネルは思った。
「あれ、ネルさん、どうしたんですか?顔色悪いですよ」
いつまでも戦闘終了時のままの場所で話していた二人に気づいたのか、フェイトが駆け寄ってくる。
他の仲間たちもなんだなんだと駆け寄ってきた。
「いや、どうしたもこうしたも…」
ネルはなんとかそれだけ答える。
「アルベルが…なんか、とうとう壊れたみたいで…」
「はぁ?」
フェイトは素っ頓狂な声を出す。
「さっきからなんなんだよ、別に普通だろうが」
子供のようにむっとなって、拗ねたようにこちらに文句を言ってくる。
口調はそんなに変わっていないが、その仕草がまるで違った。
よく言えば、可愛らしい。悪く言えば、気色悪い。アルベルだからなおさらだった。
「………えっ?」
フェイトもどうやらそれに気づいたらしく、アルベルを凝視する。
他の皆も目を見開いてアルベルに注目した。
「あ、アルベルさん…?だよね…」
「な、なんか得体の知れないもんがとり憑いてるんじゃねぇか…?」
「…頭でも打ったのかしら?」
「ま、まさか…さっきのアレで精神に異常をきたしたんじゃあ…
最後にフェイトが小声で言った台詞を、ネルは聞き逃さなかった。
「フェイト?…なにか、知ってるんだね?」
「え、いや、もしかしてと思ったんですけど…」
フェイトは言いにくそうに口を開く。



簡単に話すと、フェイトが戦闘中に断罪者に向かって使ったペテピヨボムが、運悪くアルベルにも当たってしまったらしい。
アルベルはその後しばらくぶっ倒れていたが少し経ってからすぐに起き上がって敵を倒しに言ったので、フェイトはなんともなかったみたいだな、と特に気にしなかったらしい。



「…なんともなくないじゃないか―――――!」
フェイトの説明を聞いて、ネルは思わず大声で叫ぶ。
フェイトはバツの悪そうな顔であさっての方向を向いていた。
「いや、でもまさか、こんな風になるなんて…」
フェイトは横目でアルベルを見る。
アルベルは、"何をそんなに騒いでいるのかわからない"と言わんばかりの複雑そうな顔をしていた。
「と、とりあえず!ぺターニへ向かいましょう?ここにいても何も解決しないわ」
マリアがそう言って、その場は一度おさまった。





ぺターニの宿屋。
その一室に、フェイト一行が集まっていた。アルベルを除いて。
「…で、どうすれば元に戻ると思う?」
「さぁ…。キュアコンディションじゃあ、無理だよね…」
「いっそのこと、ショック療法で蹴ってみようかしら」
「やめとけよ、余計にひどくなったらどうすんだ」
「…でも、あのままってのも、耐え難いんだけど…」
確かに。そこいる全員がそう思った。
「…とりあえず、一晩寝れば直るんじゃないかな?」
「そうだよね、同人ネタのお約束だよね」
「…どーじんって、なんだい?」
「ネルは知らなくていいのよ」
「…?」
「ま、とりあえずどうしようもねぇんだから放っとくしかねぇだろ。とりあえず一日様子見っつぅことでそのままにしとこうぜ」
「そうね、元々この町には体を休めに来たのよね」
マリアの言うとおり、ここには一日中レベルアップ上げをして疲れた皆の体を休めるために来たのだ。
「それもそうだね。じゃあ、そろそろ解散しようか」
フェイトがそう言って、皆はやおら立ち上がって各自の部屋へ戻っていった。





ガチャリとノブを回して、ネルは自分が割り当てられた部屋のドアを開けた。
すると、最初に目に入ってきたのはプリン頭の某氏。
くつろいだ様子でベッドに仰向けになって寝っころがっている。
「………」
「…ネル?なんか用か」
そう問いかけてくる様子はやっぱりいつものアルベルとは違って、ネルは困惑したように答える。
「な、なんか用かって…」
ここは私の部屋じゃなかったっけ?
そう思って部屋番号を見る。
確か私の部屋番号は206。
扉に書いてあった部屋番号は208。
………。あ、間違えた…。
ネルは心の中でそう思った。
「…ごめん、部屋間違えたみたい」
今日は疲れる出来事ばかりで、我知らず気が動転していたのだろうか。
ネルはそう言って開けた扉を閉めようとする。
「おい、待てよ」
が、アルベルに直前で止められた。
「なんだい?」
あまり、視線を合わせないようにして答える。
今のこいつを直視する勇気はなかった。
アルベルはベッドから起き上がりながら、口を開く。
「ちょうど良かった。訊きたいことがあるんだよ」
ネルの様子に気づいていないのか気にしていないのか、相変わらずの口調でそう言った。
いつもの常にめんどくさそうな口調とギャップがありすぎて、ネルは少し苦笑した。
「…何?」
「まぁ、いいから座れ。すぐ終わるから」
ぽんぽんと自分が座っているベッドを叩き、アルベルは事も無げに言う。
…男の部屋に来た女を軽々しくベッドに座らせるってどうなんだろう。
ネルは少し嫌そうな顔をしたが、すぐ終わるのなら、とアルベルの隣に座った。
「で、なんだい、改まって」
ネルがそう訊くと、アルベルは少し困った顔になって言った。
「俺さぁ、他の奴らになんかしたか?」
「は?」
いやなんかしたとか言うレベルじゃなくてさ。
そう突っ込みたいところをネルは抑えた。
「今日の…夕方くらいからか?なんか、あいつらの態度が妙なんだよ。急に目逸らしたり、人の顔見て青ざめたり」
「…へぇ」
ていうか今のあんたと普通にしゃべれるヤツがいたら逆にお目にかかりたいくらいだよ。
ネルはまた心の中でそう思う。
「…まぁ、元からあいつらは俺とは好んでしゃべったりしなかったけどな」
「…まぁねぇ」
「で、お前はどう思う?」
「え」
そんなこと言われても。
ネルは一瞬言葉に詰まる。
「…あんたさ…。自覚ないかい?」
「はぁ?」
目を丸くするアルベル。
どうやら、自分の態度が変貌しているという自覚はないようだ。
「うーん、…なんていうか、さ。あんたの態度とかが、ガラリと変わったからだよ」
「…俺、なんか変わったか?」
やけに深刻そうな様子で考え込むアルベル。
いや、だからあんたがそんな風に考えて私に相談した時点でもうすでに変わってるんだって!
ネルは自分もいい加減突っ込んでばかりだな、と思いながら心の中で叫ぶ。
「…で、お前は、それについて、どう思ってる?」
「え?」
「…やっぱ、変だって思うか?」
普段からは想像もできない物憂げな瞳でそう言われ、ネルはかなり戸惑いながら答える。
「…さぁね」
「はぐらかすんじゃねぇよ」
そう、真剣な瞳で言われたので、ネルはしょうがなく口を開いた。



「…まぁ、いいんじゃないかい?」
「うーん、正直言って、かなり変」